2012年06月19日

F/Z24(2)

衛宮切嗣と言峰綺礼、因縁の対決は、肉体の限界を超えたものと化していた。

切嗣にはアヴァロンが、綺礼には予備令呪が、それぞれの弱点を補うものを揃えた彼らの戦いは、当然のことながら苛烈さを極める。同時刻、ライダーの消滅によって聖杯の器が出現する。黄金に輝く聖杯から赤黒い泥のようなものが溢れ出し舞台一面を覆う。重量に耐えられなくなった床は抜け、階下の切嗣と綺礼に降り注いだ。

泥を浴びた切嗣は、アイリの姿をした「聖杯の意思」と名乗るものと出会う。
聖杯の内側がアリマゴ島そっくりだったのは、ここが切嗣にとって始まりの場所と言えるからだろう。彼がはじめて命を奪った場所、大勢を救うために父親を殺すことを選択した場所。自身の願いを叶える方法を尋ねた切嗣に、聖杯の意思が見せたものは、これまでやってきた切嗣の手法とまったく同じだった。多数を救うため少数を切り捨てる。やがて今救おうとしている命の数を、切り捨ててきた命の数が越え、天秤の針は逆転する。己の手法に限界があると知ったからこそ奇跡に縋るしかなかった切嗣に、聖杯はさらに追い打ちをかける。本人の識り得ない方法を願望には含められない、と。

父親を育ての親を、一度は命を救った少女を、過たず殺しつくした切嗣に残されたのは、アインツベルンの城の中で、穏やかに微笑むイリヤとアイリだった。二人と切嗣が争うことは決してないのだから、これこそ彼の言う「恒久的平和」の実現に他ならない。ならば60億の命と引き換えに、妻を蘇らせ子を取り戻せと願えば良いと聖杯は告げる。

切嗣の過去からアリマゴ島を投影してきたアンリマユはさすがだった。
アイリの人格を継承したため、彼女が最期に願った「娘の幸福」にも影響を受けているのだろう。切嗣の目指す恒久的平和に賛同しながら、アイリの望んだ平和とは、イリヤと切嗣が生き残ることを前提にしたものだった。切嗣は最後にイリヤを選ぶはずだと、アイリもアンリマユも高を括っていたのではないだろうか。

だが聖杯の意思の予測に反して、切嗣はイリヤを撃ちアイリを縊り殺す。
彼の天秤は家族を獲ることを許さない。死徒の研究を続ける父親によって齎される被害を考えたとき、父親を手に掛けることを選び実行した切嗣には、60億の命を捨てることは許されないのだ。もしその基準を違えてしまえば、積み上げてきた犠牲や代償を今度こそ本当に捨ててしまうことになる。すべて背負って生きるとはそういうことだ。このときのアイリやイリヤは聖杯が見せた幻だが、おそらく本物のアイリも同じことをしたはず。そう理解したからこそ、幻のアイリに手をかけながら、切嗣は涙を流したのだろう。絶命する間際までアンリマユは呪いの言葉を吐き続けた。絶対に赦さないと。

同じものを見ていた綺礼は、切嗣に少し遅れて目を覚ます。
同時に泥を被ったはずなのに、あくまでも綺礼は傍観者だったということか。聖杯は最初から切嗣を選んでいたのだ。(「オマエを担う」という切嗣の台詞がカットされてわかりづらくなってしまったけれど) 理想を遂げるためなら全ての悪を担ってもかまわないと切嗣が口にしたときから、聖杯の意思は決まっていた。
怒りと憎しみのまま綺礼はなぜ、なぜ、なぜと問いを重ねる。徹頭徹尾すべて理想に殉じてきた切嗣が、願いそのものを捨てようとしている。己が願っても手に入らなかったものを捨て去るだけでなく、そうまでして望んだ聖杯すら拒絶した切嗣を、綺礼には理解できない。

「自らの誕生を願っている」
己の魂を理解した綺礼の血を吐くような叫びだった。破壊と殺戮によってのみ願望を成す聖杯など、いったい誰が望む? しかしそれほど疎まれ拒絶される聖杯がもし形を成せれば、同じ悪性を持つ綺礼自身の存在の肯定にも繋がる。それこそ彼の迷いすべてに対する解ではないか。左手を上げながら喚く綺礼を、切嗣は黙したまま背後から手にした銃で撃ち抜いた。

そして切嗣は階上へ向かう。
聖杯を破壊するために。


☆アイリとイリヤ
もうクルミの芽を探しに行くこともできないねと泥に閉ざされる窓を見る切嗣に、涙腺決壊。銃口を向けられて不思議そうに切嗣を見上げるイリヤの愛らしいこと。大原さんの半狂乱ぷりも素晴らしく、このあたりはちょっと冷静に観てられなかった。あの可愛らしいアイリの顔が醜く歪むところなんて、直視できませんよ・・・。そしてあのエンディング。すべてはこの日のために用意されていたんだなあ・・・。

☆ヤング綺礼の肉体は無敵
マジカル八極拳がいかんなく発揮された今度の戦い。
令呪を使って肉体強化、弾丸の軌道変更ならまだしも、なにより3倍速4倍速の切嗣にも生身のままついてくるとかどんだけよ。ノーモーションで大木折るなんて朝飯前だったね^^ 流れるような足さばきで間合いを一気に詰めるとか、いやあ、いいもの見せて貰った。この強靭な肉体がなくては、衛宮切嗣との戦いの場に立つことはできなかった訳だから、空虚を埋めるために厳しい鍛錬を続けたてきたことも無駄じゃなかったよ綺礼。(噂ではこの綺礼ですら代行者の中では中の下なんだとか? 令呪でブーストしてるのであれだけど、一流の代行者とはいったいどれほどのものなのか、想像するだけで恐ろしい)

対戦前にロザリオに口づけするとかああああああふおおお
あなたそんなキャラじゃなかったよね・・・?
いやあ、もう、ほんと・・・ごちそうさまです。

大道具部屋が、なんか精神と時の部屋みたいになっててびっくりしたけど、真っ白い空間で、薬莢やら折れた黒鍵の欠片が粉々に飛び散ったり、血飛沫が上がるさまに大興奮でした! コマ送りコマ送り・・・。欲を言えば、固有時制御の振り戻しにもっともっと苦しむ切嗣が見たかったです(おい) 抜け落ちる天井と降り注ぐ泥のコントラストが、本当に美しかった。なんかもう、いろいろ凄かったぁ・・・。

2012年06月17日

F/Z24(1)

巻き上がる炎と、降り注ぐ水滴の中、かつての主従が相対する。
しかし、セイバーとバーサーカーの戦いは唐突に終わりを迎えた。

バーサーカーの正体を知ったセイバーは戦意喪失状態で、ランスロットの刃を、これまでに培った技術でなんとか躱しているようなあり様だった。そのため、突然動きを止めたランスに剣を向けたのも、明確な殺意より反射が先だったのではないだろうか。生死を賭けた戦いの中で、セイバーの高い戦闘スキルが、一瞬の隙を見逃すことを由としなかった。目で捉えた事象に対して、身体が自動的に動き、ランスの命を奪っていった。

「それでも私は聖杯を獲る」
「そうでなければ、なにひとつ償えない」
聖杯を手に入れすべてを清算する、償う。
消えゆくランスを前に、セイバーは固く誓う。人の心がわからないと去っていった臣下、王妃、理想の騎士だった一番の朋友。かつての故郷・臣民たちすべてを取り戻すと。ブリテンの復活という理想を掲げていたセイバーが、無意識の内であれ、正しさを盾に、己の願望を自覚し口に出す重要な場面だ。

ときに正論は、人を追い詰めてしまう。
追い詰めて逃げ場を失くし、救いの道すら与えない。
それがセイバーの言う正しさであり理想であった。
原作では、セイバーは倒れてくるランスを抱えながら、間隙を縫ってまで勝利を手にした自分の浅ましさを恥じるのだが、アニメ版では、どこか思い詰めたような、昏い瞳を晒している。まるで、正しさを完遂するにはランスロットの死もまた必然であると、それも含め、聖杯によってすべて覆せば良い、などと思っているかのようだ。ランスとの因縁を完全にカットすることで、アーサー王個人よりもセイバー個人の心情を優先したのは、時間制限の中で最良だった。理想の名のもとに朋友の死すら取り込もうとするセイバーを描くことで、より切嗣との相似性が浮き彫りになったように思う。

傷だらけのセイバーの行く手を阻んだのはギルガメッシュだ。
なりふり構わず聖杯を求めるセイバーを愉快そうに見やって、剣を棄て妻になれとギルガメッシュが言った。顔を合わせるたび戯言ばかり言うギルガメッシュだったが、さすがのセイバーもあまりのことに言葉を失う。ギルガメッシュは、人の範疇を越えた理想を目指すセイバーの生き方を楽しんでいたのではなかったか。憤るセイバーを見るギルガメッシュの瞳には、恍惚と愉悦が浮かんでいる。宝物庫に所有した極上の酒を口にするときのように、セイバーの名前を呼ぶギルの声がなんともエロス! セイバーの存在そのもに価値があると認めたからには、存分に愛でるというのが王の言い分だ。

英雄王に反撃しようにも、彼の背後には聖杯がある。
マスターからの魔力供給に滞りがなければ、エクスカリバーを放つことも可能だが、聖杯を傷つけることはできない。婚姻を迫る英雄王、精神的にも肉体的にも追い込まれたセイバーの元へ切嗣が現れる。これで形勢逆転かと思われたが、状況を打開するどころか、切嗣はセイバーにとんでもない命令を下す。宝具による聖杯の破壊。残る令呪二画すべて用いて下された命令を、サーヴァントであるセイバーが拒む術はなかった。理想を追い求めた切嗣を、マスターとして尊敬することはできずとも、その願望の根底にある正しさへの執着を感じていたセイバーにとって、アイリスフィールや舞弥を犠牲にしてまで手に入れた聖杯を、マスターが壊そうと決めた理由など知り得るはずもない。結局マスターとサーヴァントして心を通わすこともないまま、セイバーはエクスカリバーを解放する。

☆ランスロットとアーサー王の因縁
どうするんだろうね。せっかく置鮎さんなのに、もったいないもったいない。
BDで補完か?なんて言われてるみたいだけど、そうすると、ランスが倒れてくるときのセイバーの表情が合わない気がする。「待って行かないで・・・!」って表情じゃないだろうアレは(笑) あなたの死は無駄にはしないって表情だよね。確かにこのときのセイバー(原作)は、今読むと、硬質で中身がよわよわなzeroセイバーというより、どちらかというと、ステナイのセイバーさんに近い印象。

でもほんとに、これだとセイバーは完全に脇役ですなぁ・・・。

で、まさかの分割レビューですYO!!
ウソだろ?おれも信じられないんだぜ?

(2)につづく・・・。

2012年06月15日

F/Z23

ライダーたちの前に現れたのはアーチャーだった。
互いを好敵手と認め合った二人の、決着のとき。

圧倒的な強さを持つ相手が怖いかとライダーに問われ、ウェイバーは素直に怖いと答えた。そこには普段の強がりも卑屈さもなかった。心が躍ると言えばいいかと軽口まで叩く少年に、虚を突かれたのはライダーの方だ。令呪を使い切りマスターでなくなったことが、ウェイバーを開き直らせている気がする。
冬木大橋で向かい合う征服王と英雄王。いつかの酒宴で交わした杯をふたたび取り出し、二人は酒を酌み交わす。ともに戦わないかというライダーの誘いを、友は生涯ただ一人、王も二人はいらぬとアーチャーは笑って拒んだ。それが最古の英雄、ギルガメッシュの孤独なる王の生き方だった。

市民会館へやって来たセイバーに、バーサーカーが襲いかかる。
エクスカリバーの間合いを的確に測ったバーサーカーの戦い方に、相手は過去の自分を知る人物なのではないかと考えたセイバーの判断は正しかった。「アーサー」と禍々しい呻り声を上げる彼こそ、かつてのアーサー王の臣下ランスロットだった。砕けた兜によって初めて表になったバーサーカーの表情は、セイバーに対する憎悪で醜く歪み、彼本来の端正な面影は欠片も残っていない。完璧な騎士と称されるほどの武人であったランスロットの変わりように、愕然とするセイバー。それほどまで私が憎かったのか、恨んでいたのかと問い質しながら、抑え込んでいた不安が彼女の中で膨れ上がる。ライダーの「王の軍勢」を見たとき感じた不安は、このとき疑心となって彼女を揺らす。なんといってもアーサー王は英霊にまで昇華された英雄だ。だがその名誉や称賛とは裏腹に、一人の騎士をここまで追い詰めてしまったのではないか? このときから、セイバーは己の根底を覆しかねない恐ろしい問いを抱えることになる。

王の軍勢を展開するライダーに対して、アーチャーは乖離剣を開帳した。
キャスター戦で時臣に乞われて激怒していたエアと呼ばれるその剣は、かつて天と地を切り分けた逸話をもつ原始の剣。剣という概念すらない時代に生まれたものである。解き放たれたエヌマ・エリシュは字の如く「天地乖離す開闢の星」。世界そのもの空間ごと切ってみせるアーチャーの宝具によって、王の軍勢は消滅する。

ライダーに残されたのは、愛馬ブケファラスのみ。
なにも持たない王の、臣として仕えるかという問いにウェイバーは即答する。あなたこそボクの王だと。マスターでも友でもなく「王と臣下」という答えがいかにもライダー陣営らしい。王の夢を見極め、後世に語り継ぐのが臣下の役目だと言って、「生きろ、ウェイバー」と王は命じる。
あるかないか知れないものを追いかけて誰かを死なせるのはもう嫌なのだと、地球が丸いことを知って驚いたと自嘲気味に話していたライダー。彼は現界した瞬間からずっとこの想いと向き合っていたのだろう。しかし臣下を背にして敵と向かい合ったときの高揚は、そんな諸々をすべて消し飛ばしてしまう。強大な敵、越えられないもの、そこへ挑もうとするとき高鳴る鼓動、それこそが追い求めたオケアヌスの潮騒なのだと、劣勢であるはずのライダーの声は、楽しげですらある。届かないものに手を伸ばす、その姿を臣下が見守っている。だから立ち止まるわけにはいかない。

ライダーの剣は、アーチャーには届かなかった。
鎖に四肢を抑えられ乖離剣に刺し貫かれて血を流しながら、ライダーは微笑む。今回の遠征も心が躍ったと、満ち足りた声で呟いて、ライダーは消え去った。インタビューで読んだとおり、ライダーは召喚されてから消滅するまで、いつどこで死んでも良いように生きていた。あと一歩もう一歩、夢に近づくために死ぬまでその足を止めなかった。愚かしいだろうか惨めだろうか。彼にとってはこれが最上であり、彼が最上であったと思える限り、ウェイバーがこの戦いを悔いることはないだろう。最初で最後の王との誓いを護る、その誇りと誉れを胸に生き続けることは、決して楽な道ではない。けれど、このたった20分に満たない戦いのすべて、ライダーと過ごしたすべてを記憶しているかぎり、ウェイバー・ベルベットが道を違えることはない。


☆ギルガメッシュ最強伝説
エアさえあれば聖杯戦争なんて3日で終わりそうなもんだが、そこはギルがギルなので(笑)
財宝庫の鍵→扉→乖離剣の流れが美しかった。テンション上がった!!
ライダー戦のギルガメッシュを見ると、ほんとズルイなあと思う。いつも滅茶苦茶で破天荒なギルだが、自分が認めた相手には誠意ある態度を見せる。ライダーとの約束を護って耐えるウェイバーに「忠道、大儀である」と述べるところを見ても、セイバーの言葉を揶揄することはあっても、騎士道を軽んじているわけではないとわかる。

それにしても、乖離剣エアといい、天の鎖(エルキドゥ)といい、可愛らしいセンスですなあ(笑)
ギルとその友人のことを考えると、あっという間に時間が過ぎてしまいますヨ。寸前のところでライダーを止めた鎖と、振り下ろされる刃にぴくりとも動かないギルとか、なんという信頼関係!! いや、鎖はただの鎖だとわかっているんですが、つい燃えてしまいます。

☆祝福の聖句
声がつくと凄まじい破壊力です、ね・・・。うう、酸欠になるかと・・・。
次回、とうとう切嗣と綺礼の対決かと思うと、思うと、ふおおおおおお
予告だけでなんかいろんなもの弾けたのに、次回、30分の視聴に耐えられるのだろうか。

2012年06月10日

F/Z22

攫ってきたアイリスフィールを連れて、綺礼は以前キャスター陣営が隠れていた下水道の地下貯水槽に潜んでいた。

弱りながら毅然とした態度を崩さないアイリ。
彼女から、自らの虚ろを指摘され、綺礼は困惑する。だが綺礼の空虚を見抜いたのは切嗣だと聞いて、困惑は喜びへと変わる。やはり切嗣は同じ空虚を抱えていたのだと。自身の空虚を埋める手段を欲してきた綺礼は、切嗣が空虚から救われたのであれば、自分もまた救われるのではないかと期待してきた。切嗣を理解することでそれが叶うと信じてきた。だからあれほど男との問答に執着していたのだ。

シャーレイ、父親、ナタリア、舞弥、そして最愛の妻。親しい人を繰り返し切り捨てながら生きてきた切嗣を、それでもアイリは「優しい人」と言う。痛みを背負うとわかっていながら、愛さずにはおれない人なのだと。だが綺礼にとって「恒久的世界平和」など到底信じられるものではなかった。いや、自らを理解し愛してくれる人間を手ずから捨ててまで、願望器に願いを託す男の心が、綺礼には理解できなかった。自身がどれほど願おうと求めようと決して手に入れられなかったものを、放棄し続けてきた衛宮切嗣。そのひとつでも綺礼にとっては幸福になり得たものを、空しい夢物語のために捨ててきた男。己の求め焦がれてきたものを無下にする切嗣に対して、綺礼は激しい憎悪を向ける。

聖杯戦争において勝利の達成とは、ただ敵を殲滅すれば良いだけではない。
聖杯を降臨するため、儀式を行うだけの霊的な力を備えた場と、降ろすための聖杯の器を揃える必要がある。冬木市内の霊脈のうち残された場所はふたつ。市民会館と円蔵山である。聖杯の器を手に入れた綺礼が、儀式においてより最適な円蔵山を選ぶと予測した切嗣は、山頂にある柳洞寺で待ち伏せ、敵を迎え撃つ気でいた。
しかし綺礼は最終決戦の場に、市民会館を選んだ。切嗣の理想を知った綺礼にとって、聖杯の行方などどうでも良い。彼の目的は敵のマスターを駆逐し衛宮切嗣を壊すことだけだ。聖杯が破壊されてもそれはそれで運命だとまで言い切っている。

綺礼の上げた狼煙を、ライダーとウェイバーもまた見ていた。
今夜が最終決戦になると予想し愛馬を呼び出したライダーに、ウェイバーは令呪すべてを使って勝利を命じた。魔力供給も満足にできず、一般人である居候先のマッケンジー氏には暗示を破られ、ついにセイバー戦では足を引っ張るという失態を犯してしまった。なにも役に立てないのなら、せめてマスターの権利を放棄してライダーの戦いの邪魔をしないようにと考えたのだろう。高い自尊心のせいで必要以上に卑屈になっていた少年があっけなく令呪を手放したことに、原作を読んでいるとき驚いたのだけど、映像で見ると命じるというより、ライダーの勝利を祈願する風でちょっと健気な感じすらした。ところがこのウェイバーの決心すら、ライダーはなんでもないことのように笑って包み込んでしまう。マスターでなければ朋友として、二人は戦地へ向かう。

綺礼によって命を終えたアイリは、気づくと、山と積まれたホムンクルスを見ていた。
それはアインツベルンが聖杯を求めた歴史でもある。
その夥しい数の人形の亡骸に零れた涙は、憂いと哀しみだ。彼女らと同じ運命を辿るはずだったアイリは、繰り返されてきた屈辱や絶望を、ホムンクルスの一人として見ている。だがその涙も、腕の中で不安に怯える娘の未来を想ったとき、母親としての願いへと変わる。決して自分たちと同じ道は歩ませないと、夫とともに固く誓った約束をいま一度確認するように、アイリは小さなイリヤを強く抱きしめる。

しかし、涙を零す「これ」は本物のアイリスフィールではない。
器の外装、アイリという人格は、綺礼によってその命が絶たれたことで機能を失くしている。まして聖杯の器が出現間近となった今、器として動き始めたものが、その中身を見通せるはずがない。原作を読んだときもイメージしにくい部分だったのだけど、映像にされるとますます混乱するなあ。原作では、卵の殻をアイリ(外装)、中にいる雛を器、雛の内臓を聖杯と仮定した上で、雛が出てくるとき卵の殻は割られていると例えている。割れた殻に聖杯が観れるはずもなく、であるなら、砕け散った殻の一部を食べた雛が、アイリの記憶を見ていると考えるべきだ。

聖杯は意思を持つものであり、アイリの記憶を見て涙を零した。
そう考えると、上で考えたアイリの涙の理由もまた変わってくる。
この世すべての嘆きを刈り取り、すべて苦悩を取り払う力。すべてを呪い叶える願望器として、そう在ることを望まれ仕組まれた聖杯と、アインツベルンの意思によって作り出されたホムンクルス。両者が成った動機は近い。原作ではアイリはアインツベルンの歴史に心を痛める描写が入るのだけど、人形の骸に涙するシーンは、聖杯に意思があることを決定づける、しかもアイリの性格を考えると、多分に殻のアイリスフィールに影響を受けていることも窺わせる、良い伏線だと思う。

☆ライダー
ウェイバーが眠る横でライトもつけず、キャンドルの明かりで詩集を読むライダーにじんわりきた。背を丸めて、静かに文字を追う姿がなんとも・・・。OPの薄暗い部屋で窓の外をみやる二人の背中が印象的だと以前に書いたとおり。「比肩せよ」とニカっと笑顔で告げるライダーに、ああ、これなんだなあと妙に納得でした。

2012年06月07日

F/Z21

場面転換が多くて、経過追うだけでどんどん長くなる罠。

土蔵の中でバーサーカーの宝具の痕跡を見つけた切嗣は、間桐の家へ向かった。
そこで、雁夜と言峰綺礼が手を組んでいることを知る。
それは、セイバー・切嗣の陣営をさらなる苦境へと追いやるものだった。今回の戦争で最強と思われるアーチャーだが、バーサーカーは戦う上で相性の悪い相手。この二勢力がぶつかり合っている間に、残るライダーとセイバーを当たらせる。その間隙を縫って各マスターを狙う。これがおおよそ切嗣の目算であったはずだ。しかしアーチャーとバーサーカーが組んでいる今その計算は成立しない。なにより、聖杯の器であるアイリスフィールが言峰・間桐の手にあるという事実。少なくともセイバーをいずれか一方にぶつけ、なんとかアイリの身体を奪回する必要がある。遠坂時臣の殺害からたった一晩のうちに、勢力図を大きく塗り替えた綺礼の手腕に、切嗣は驚きと焦燥を覚える。

その頃セイバーは、一度見失ったライダーをなんとか見つけ出しバイクで猛追していた。
いくぶんか復活したライダーはもとよりセイバーとの戦いを望んでいた。追いかけてくるセイバーを訝りながらも、好都合だとゴルディアスホイールを駆って向かい合う。ライダーの牛車にアイリの姿が見えないことに気づくセイバーだが、ここまで追ってきた相手に今更背を向けるわけにもいかない。
ライダーとセイバーの一騎打ちはセイバーに軍配が上がった。セイバーの放ったエクスカリバーを間一髪で避けたライダーだが、ゴルディアスホイールを失ってしまう。ライダーに追撃の手段がないことを見てとったセイバーは、アイリスフィールを探すため市内へ取って返す。(原作で読んだときよりずいぶんあっけない結末だった。カーチェイスの時間が長くて、上段からの剣げきをライダーがいなして、あとはエクスカリバーで幕というちょっとしょんぼりな展開だった・・・。ここでゴルディアスホイールを失くす必要があったとはいえ、な。セイバーの強さの証明ではあるんだが)

切嗣の想像どおり、アイリスフィールを攫ったのは、令呪の命令でライダーに扮したバーサーカーだった。現れた本物のライダーをセイバーが追い駆けていくのを見送った雁夜と綺礼。雁夜へ予備令呪から2画を与え、綺礼は聖杯を雁夜へ譲るとまで告げる。戦いの序盤、あれだけ桜を救うため聖杯を持ち帰ると宣言していた雁夜だが、このときすでに彼の意識は別のところへ移っている。情報収集の手段が少ない雁夜にとって、綺礼の申し出は突然だったはずだが、彼は遠坂時臣との会合を条件に共闘を飲んでいた。

雁夜が去ったあと、綺礼の前に間桐臓硯が姿をあらわす。
端から次回と次々回の聖杯戦争を見据えている臓硯は、出来の悪い雁夜が苦しみ壊れていくさまを遠巻きに愉しんでいる。その愉快さを理解できるだろうと問われ否定する綺礼だが、外道に堕ちることに照れがあるのかとからかわれて、黒鍵を投げつけ反発する。ことのき綺礼が黒鍵を抜いた理由はいくつかあるだろうが、なによりも、秘術による延命を繰り返し生き長らえ、醜悪な体と精神をもつ臓硯に対する嫌悪からだった。元代行者としての性がもたらす生理的嫌悪感。愉悦に目覚めたとはいえ、彼の中には、常に両極の基準が存在している。

約束の時間に教会へやってきた間桐雁夜。
積年の恨みをぶつけるように言葉を浴びせながら近づいたそのとき、時臣の身体がゆっくりと傾く。崩れ落ちる時臣の亡骸を腕で支える格好になった雁夜は、大きな混乱と衝撃に言葉を失った。そこへ葵が現れる。突然思いもしなかった女性の登場に、雁夜は言葉にならない呻き声を上げた。

葵の口からようやく「桜」の名前が零れた。おそらくその名前を口にすることも諦めていたのだろう。葵は夫ではなく、娘を奪った間桐を恨んでいた。娘を奪うだけで飽きたらず夫まで奪った間桐への憎悪が、雁夜へと一気に噴出する。葵の一言は、雁夜の心を粉々に破壊した。雁夜はあと何日生きられるだろう、何回戦えるだろうと確かに怯えていた。だがあれは「願いが成就しないまま死ぬこと」への恐怖だった。桜を救えず、時臣に一矢報えないまま死ぬことを怖れていた。その根底には、愛する女性に笑顔を取り戻したいという望みがあった。遠坂にいるかぎり、葵は不幸だ。その不幸から救い出してあげたい。だから涙を流し時臣の亡骸を抱いて、憎しみの言葉を吐く葵を、認めるわけにはいかなかった。恐慌状態で葵の首を締めながら、雁夜は真っ暗闇の中で叫び声を上げる。(ここはアニメならではの演出で非常に良かった) 「なんのために、誰のために、死ぬぐらいならいっそ」 好意や愛情、羨望や憎悪、多くの感情がない交ぜになった雁夜の、紛れもない本心だろう。笑い合う母と娘二人を遠くから見ている自分自身、その人の幸せを願って身を引いたはずなのに、見返りを求めない愛情だったはずなのに。母娘との距離は遠ざかっていくばかりで。

葵がなにを望んでいるのか求めているのかを思いやれなかった時点で、雁夜はすでに大きな間違いを犯しているわけだが、彼は最後までそれに気づけなかった。雁夜の本当の悲劇は、中途半端に正気を取り戻してしまったことかもしれない。葵の首を絞めたまま狂ってしまえば、どれだけ楽になれただろう。己のサーヴァントのように、狂ってしまえれば・・・。


☆臓硯と綺礼の対面
snへの伏線としては勿論、「自慰の如き秘め事にでも耽っている気でおったのか?」って臓硯の台詞がカットされたのがとても残念だった。照れをからかわれ、↑の台詞を聞いて間髪おかず黒鍵を投擲する、って流れが堪らないのです。個人的にですよ、これはとてつもない偏見だと思うのだけど、聖人であろうとするあまりそういうものを回避してる感があるんだよな・・・4次峰。奥さんも(娘さんも?)いるけどさ・・・。
原作ではこのとき臓硯の口から、聖杯のシステムがおかしくなっていると語られています。キャスターが英霊として召喚されたのはおかしい云々と。このあとアイリとアンリの対話があるので、前フリとして充分だと思うのですが。結局1クールから通しても臓硯の目的がよくわからないまま、というのが一番の問題でしょうか。

☆間桐鶴野
名前も出てこねえ(笑)
切嗣さんにマウントされてヒーヒー言ってるだけ(おい)
なんだかなあもう。

2012年06月05日

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2012 プロローグ&第1ステージ

Critérium du Dauphiné
開催:6月3日〜6月10日
公式:http://www.letour.fr/indexCDD_fr.html

ツール・ド・フランス前哨戦のひとつ。
総合ではアンディ、ヴィノクロフ、エヴァンス、ウィギンス、ニバリ、メンショフが出場と聞くも、ジロが終わったばかりということもあり、後半に向けてのんびり視聴の予定だったのだが、まーさーかーの、第1ステージだったので叫びにきました。

今年の見どころは、第4ステージ53.5q個人タイムトライアル&後半の山岳三連戦。
ツールと同じ距離を取ったTTは得手不得手がはっきりとタイム差に現れる。なにより注目すべきはユニークな山岳三連戦。第5ステージは1500m級の山頂からゴールまで68qもある。第6ステージは3級3つ1級2つ、超級1つを越えて12qを一気にダウンヒルしてゴールとなる。第7ステージは唯一の頂上ゴール、1級山岳コルビエを越えて登り調子で山間の街へ向かう。どれもタイプの違った山岳ステージだが、そのどれをとっても、チーム戦略が問われるコース設定ではなかろうか。はっきり言って、どのチームが、誰が勝つか予想できない。今年のドーフィネは面白いことになりそう。

スタートリスト@CN
http://www.cyclingnews.com/races/criterium-du-dauphine-2012/start-list

ヴォクレール、シャヴァネル、ジルベール、トニー・マルティン、サイモン・ジェランス、ルメヴェル、アローヨ、コーボ、ボアッソンハーゲン、ヴァンデンブロック、リッチー・ポートといった個性的な面々も。スプリント勢は開催日程が被るツール・ド・スイスへ集まったらしく、ドーフィネは全体的に硬派なイメージ。個人的には、マシューロイド(ランプレ)やバレド、ピノーの姿がたくさん観れると嬉しいな・・・。

プロローグ
リザルト@CN
http://www.cyclingnews.com/races/criterium-du-dauphine-2012/prologue-itt/results

5.7qの個人TTを制したダーブリッジは、今年デビューの21歳!
グリーンエッジは本当にスピードマンだらけ。

メンショフさんの姿をまったく捕捉できませんでした。

第1ステージ
リザルト@CN
http://www.cyclingnews.com/races/criterium-du-dauphine-2012/stage-1/results

エヴェンス、まさかの、アタック逃げ勝利!!
ジルベールで行くとみせて、まさかのエヴァンスである。
ソファから転げ落ちるかと思った。

通常ツールに目標を置いているエース格の選手であれば、コンディションを整えていく段階。他の総合メンバーの調子やらを伺いつつ、自分の足やチームは温存する、それが定石。途中集団を牽き始めたアシストたちを「そんな牽かんでええねん」とばかりに自ら言いに上がってきたエヴァンスを見て、しっかり手綱取ってるねと感心していたのだけど。ゴール後インタビュアに囲まれるエヴァンスに、戻ってきたアシスト選手たちが笑顔満面で手を差し出すのが印象的だった。あとジルベールな・・・。

本来ならジルベールが行くところだったんじゃないだろうか。
もちろんチェックは厳しかったろうけど。もしこれがBMCの作戦だとしたら、ツールのディフェンディングチャンピオンであるエヴァンスは、追われる立場ではなく、もしかすると今年もまた挑戦の年と考えているのかも。いやあ、難しいことは抜きにしても、ほんとうにびっくりした。

なにが驚いたかって、表彰台の明るいエヴァンスのようすだ。
貰った花束を観客へ放り投げるのはまだしも、ステージを去り際、貰った牛?のぬいぐるみを放る真似をして、「いやいやこれは駄目駄目、できないよー」なんてパフォーマンス!あのエヴァンスが!(失礼にもほどがある) あの堅物で生真面目なエヴァンスが! 彼にいったいなにがあったのでしょうか(おい) インタビューでは眉間の皺もどことなくいつもより薄かったような・・・。テンション高い、というか、すごく朗らかなエヴァンス。気負ったところがまったくなくて、二度びっくり。

☆貴重なメンショフさん
http://www.cyclingnews.com/races/criterium-du-dauphine-2012/stage-1/photos/225615
最後5qくらいでカチューシャが前方に集まっていたので、あの中にメンショフさんがいたはず。

2012年06月01日

F/Z20

2週遅れなので少し駆け足感想。
場面転換が多くてどうも散漫気味。

キャスター戦から霊体化したままのライダーを不審に思ったウェイバー。
己のサーヴァントが魔力不足であると考えた彼は、ライダーを召喚した場所で地脈の力を使って、なんとかライダーの回復を試みる。実際、王の軍勢を貯蔵魔力で補っていたライダーは、ウェイバーからの魔力供給を差分なく受け取るため実体化を控えていた。王の軍勢の魔力消費が大きい上に、他のマスターよりウェイバーの魔力供給が少ないことも一因だろう。魔力を根こそぎ奪われ死にかけても自分が始めた戦いだから構わないというウェイバーに、それは聖杯が本当にあればの話だろうとライダーは答える。あるかないか知れないものを追いかけて誰かを死なせるのはもう嫌なのだと。それは、最果ての海を追い求めたイスカンダルの過去だ。英霊として現界と同時に、最果ての海など存在しないことを知ったときは堪えたと、苦々しげに呟くライダーの声にいつもの覇気はない。それでも自分がマスターだとウェイバーは返す。マスターとサーヴァントである限り、どこまでも共に戦場に立つのが当然であると、言外に告げているのだ。ウェイバーの言葉を聞いたライダーに、いつもの快活さが戻ってくる。

生徒というか息子というか、いつも与えられるばかりであったウェイバーが、具体的に魔力供給するようすが描かれているのと同時に、どことなく弱音を漏らすライダーを力づける場面。非力で捻くれていた少年もすこしづつ成長しているのがわかる。

隠れ家の土蔵に設えた魔法陣の中で休んでいるアイリのもとへ、彼女の状況を察した切嗣がやってきた。アサシン、キャスターに続いてランサーが消滅した今、聖杯の器をその身に抱えるアイリスフィールは限界にきている。これからの戦いにこそ必要だと切嗣へアヴァロンを手渡し、自分は幸せだと告げる口調は、どこまでも穏やかだった。娘のことを託して、切嗣を送り出す彼女は、これが夫と言葉を交わす最後だと気づいている。あともう一体でも英霊が消滅したときアイリスフィールとしての外装が綻び、やがて人としての意識を保てなくなるだろうと。

その一方で、切嗣の勝利を強く願っている。夫の願望が叶えられた未来には、聖杯戦争も存在しないはずで、器としての役目がなくなれば、娘のイリヤが人間として幸せな人生を得ることができるからだ。アインツベルンのホムンクルスという生贄が自分で最後になれば良いと、アイリは言う。切嗣の理想に同調していただけの彼女が、一人の母親として娘の身を案じているのだ。

遠坂からの情報でライダー陣営の潜伏先を知った切嗣は、すでにセイバーを向かわせていた。だが彼はそこへ向かわず「遠坂時臣を討つ」と言う。ライダーとセイバーの戦いになればアーチャーも姿を現す、守護であるサーヴァントの不在を狙ってマスターを殺害する。またもやセイバーを囮にというわけだ。一時的にとはいえ協力関係の遠坂に矛を向けたのは、そんな冷徹な計算と、アイリの苦しみを長引かせないための焦りがあったのかもしれない。

しかし事態は彼が考える以上のスピードで進んでいた。
切嗣は、向かった遠坂邸で時臣の死を知ることになる。強固だった屋敷の結界は解除されており、屋敷内は無人と化していた。テーブルに残されたティーカップは、その場に時臣と親しい間柄の人物が存在したことを示唆しており、地下の工房に難なく侵入できたこと、絨毯の血痕が遠坂時臣のものと断定したとき、切嗣は最悪の事態を想定したはずだ。本来、己のマスターが殺されるのをサーヴァントが黙って見ているはずがない。しかしサーヴァント自身にその意思があれば話は別だ。時臣から信頼され、サーヴァントを失くしマスター権を失っていながら新たな令呪を獲得する機会があった人物。それは、言峰綺礼以外にあり得ない。遠坂時臣の死亡、言峰とアーチャーの再契約。それは切嗣にとって最悪のシナリオだ。

さらに事態は悪化の一途を辿る。
舞弥からの知らせで、舞弥とアイリが襲われたことを知った切嗣は、土蔵へ戻るよう令呪を使ってセイバーへ命じる。戻ったセイバーは、重傷の舞弥からアイリがライダーに攫われたと聞き、ライダーを追いかける。切嗣が土蔵に辿り着いたとき、舞弥は瀕死の状態だった。自分の死に涙を浮かべる切嗣に「泣いては駄目」「まだ壊れては駄目」と、彼女は最後の言葉を残す。アイリが妻として、切嗣の理想は正しいと、優しい夫の心が折れないよう何度も言い続けていたように、彼女もまた男のこれからだけを思っている。少女兵として戦争の道具だった少女を戦場から連れ出したのは切嗣であり、救った命なら好きに使ってくれと差し出す少女に名前を与えのも切嗣だ。己の機械の一部として長い時を過ごしてきた。舞弥は自分の心は壊れていると言ったけれど、息も絶え絶えに、遺される切嗣を想って言葉をかける彼女は、充分に一人の人間ではないか。感情を抑え込んだ切嗣は低く告げる「お前の役目は終わりだ」と。その言葉に、舞弥は安堵するように息をひきとった。

☆遠坂邸の結界がなくなっていた件
結界を維持したまま去っていた原作言峰に比べて、アニメ言峰はどうやら完全に開き直っている。(放送の尺という制限を考えると当然とも言えるが) 時臣の死亡を隠そうともせず、あちらこちらに手を伸ばそうとしてる。アーチャーという最強の手札を手に入れ、目指すものが明確になった今、彼が停滞する理由はない。

☆アイリと舞弥を見下ろす切嗣
原作ではアイリと舞弥をそれぞれ抱き起す切嗣だけど、アニメでは横たわる二人を見下ろすような格好。ずいぶん淡々とした描写に変わっていて驚いたのだが、反面、切嗣らしさが出ていて良かったと思う。
初めて父親を殺したときも、彼がその亡骸に触れることはなかった。ナタリア然り。天秤たらんと近しい人を犠牲にしてきた切嗣だが、舞弥を看取るシーンでわかるとおり、彼はその死を受け入れているわけではない。どころか怯え恐れてすらいる。死に向かう者に手を伸ばせないほどに。舞弥から伸ばされた手を取ることもできず、力を失くし落ちていくところを咄嗟に掴むことしか彼にはできなかった。
  
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