2008年06月09日

サクリファイス / 近藤史恵

サクリファイス
サクリファイス / 近藤史恵

陸上競技で高校総体優勝の経験がありながら、自転車ロードレースに転向した白石誓。国産自転車フレームメーカーのチーム・オッジに在籍し、今はアシストとして「チームのために走る」ことを喜びとしていた。チームのエース石塚は、自分以外にエースを認めないといわれるほど勝利への執念を持つ人物だが、彼には、三年前優秀な新人を潰した、という噂があった。

自転車ロードレース入門風なスポーツミステリー小説です。
勝つことを義務付けられたエースと、そのエースのために自らを犠牲にするアシストといった、ロードレース特有の仕組みなどが、とても丁寧に描かれているので、まったく知らない方でも楽しめる内容になっていると思います。その一方、レース中の選手の心理状態や駆け引きも描かれ、ウマイとこ取りで、スポーツ小説としても面白い仕上がりになっています。

そこにミステリーの要素を入れたのは是か非かといわれると、躊躇ってしまいますが。しかしそれあってこそ、主人公の一見淡白な気質が変貌する(かのような)描写に引き込まれたとも言えます。

個人的には、有望株といわれたスプリンター伊庭君の見せ場も欲しかったかな。山岳は自分も好きですけど、スプリントの醍醐味もありますし。活躍する伊庭に対する石塚さんの姿など、エース石塚の姿も描かれていると、さらに人物に厚みが出て、ラスト真相に辿り着いた主人公ともっと同化できたかもしれません。登場人物がみな魅力的なだけに、ちょっと勿体無かったですね。

本屋大賞2位の帯のコピー「読後の印象は前向きで、とても清々しい」は、人によってかなり変わってくると思います。タイトルのサクリファイス(犠牲)の意味を考えると、清々しい気持ちには、正直なれなかったけれど、それこそがロードレースの肝と考えると、根っから外した作品ともいえない。

となんだか歯切れの悪い感想ですが、一気読みにはちょうど良いページ数ですし、レースの緊張感は抜群。ページを捲るのにドキドキしたのも久し振りでした。ツール・ド・フランスが始まるまでの繋ぎ(失礼・・・)くらいの気持ちで買ったのですが、気づくと夢中になって読んでいました。

これを期に、ロードレースに興味がない方にも、オススメしたい作品です。


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