2008年06月14日

当世白浪気質(1)(2) / 杉山小弥花

当世白浪気質 1―東京アプレゲール (1) (ボニータコミックスα)
当世白浪気質-東京アプレゲール(1)
当世白浪気質-美少女は悪党の愉しみ(2) / 杉山小弥花

舞台は昭和23年日本、美術品泥棒を稼業にする吉田虎之助は、迷い込んだ山村で美しい少女と出会う。彼女は、村の守り神でもある真神家の当主だという。そして千越の務めは、山の神の使い・白狼に嫁入り、すなわち生け贄になることだった。真実を知った虎之助は、口封じのため村人たちに捕らえられてしまう・・・。

現在2巻まで発売されており、どれも一話完結なので、まずは1巻だけお試し購入というのも手でしょう。

戦後GHQの監視下におかれた混乱期を舞台としているだけあって、当時の生活に密着した(洋装や和装だけでなく)流行なども描かれており、なかなか面白い作品です。

ただこの作品の肝は、人物描写にあると思います。
シベリアで捕虜経験がある虎之助は、「美しいもの=光」を絶えず求めている人物のようです。いつもヘラヘラとして女性の尻を追いかけて千越をヤキモキさせます。ところが実は、彼の胸の内は世界の理不尽さを憎んでいる。憎んでいるからこそ、抗い、生きることに執着しているのです。
一方、千越は白狼の許婚として死を定められていたことで、「生」を諦めていた少女。山深くで育てられ無垢な彼女が、様々な人々と交流し沢山の価値観を知ることになる。虎之助に対する想いが恋愛なのか慕情なのか親愛なのか、まだ彼女自身にもわかっていません。

虎之助は千越が成長していくことを心底願いながら、どこかで、彼女の神聖さが失わることを恐れています。それは彼の中に、穢れた世界に対する憤りがあるからでしょう。だから、己の手によって喪失することを頑なに拒む。彼女の神聖性はもちろん、千越自身を失わないように死も辞さないとまで言い切ります。では、言われた千越の想いはどうでしょうか? 人形としての価値ではなく、一人の人間として大切なのだとお互いに通じ合わなければ意味がない。

この物語はドタバタ人情コメディーの形を取りながら、その実、人間の持つ強さや弱さ、そこから生まれる葛藤、そして二人の成長を描こうとしているようです。2巻の最後には、ひとつ決着がつけられるのですが、まだまだ先はわかりません。

ところで、毎回お宝目当ての虎之助・千越コンビが、ドタバタと事件に巻き込まれていくストーリー。この手の展開はパターンが限られているので、ちょっと注意が必要かなと思いますね。また「ミステリー」「人情もの」「浪漫」「恋愛」が絡まっていて、危ういバランスで作品が成り立っている感があります。一話完結の隔月連載のせいもあるんでしょうが、これだ!という(全体として大きな)山場がないと連続して読むのが辛くなりそうです。

とはいえ、千越の幼い可愛さの中に時折顔を出す真っ直ぐな美しさは必見。個人的には、虎之助の無意識な甘えが出るシーンが特筆です。私も千越ちゃんに膝枕されたい。
この記事へのコメント
初めてコメントします!!

以前から、時々訪問させて頂いています。
(読み逃げでしたが・・・)
今日の更新を見てめちゃめちゃ応援したくなりました!!
がんばってください!!!!


Posted by ルカ at 2008年06月16日 13:06
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