2008年12月07日

ヴィルヘルム・ハンマースホイ−静かなる詩情

先日テレビで流れたCMで気になった絵があり、展覧会の美術館名だけ記憶していたのですが、なんと開催が今日まで!とわかり、あわてて行ってきました。最終日の、かつ日曜日とあって、激混みでした。

ヴィルヘルム・ハンマースホイ−静かなる詩情
会場:国立西洋美術館
期間:2008年9月30日〜2008年12月7日

デンマークのコペンハーゲンに生まれたVilhelm Hammershoiは、何度か住まいを変えながらも、コペンハーゲンから出ることはなかったそうです。彼の絵に始めから完成されたものを感じるのは、そういった自身の性質もあるんでしょうか。

Hammershoi

≪背を向けた若い女性のいる室内≫
テレビで初めて見たのはこの絵でした。
人物が描かれているのに、それを感じさせない不思議な絵だな、というのが第一印象でした。

回顧展と銘打つだけあって、風景画→人物画→人のいる室内画→人のいない室内画という流れ。さらに室内画の間には、ハンマースホイと同時期活躍した画家二人の小展示がなされ、独特の緊張感を持つ展示となっていました。

●風景画
≪ティアスデーエススコウエン(火曜の森)≫
キャンバスの中心よりやや下に地平線、中央に森、右奥には遠く数本の木々が見えます。ただ飛ぶ鳥の姿はなく、風に揺れる葉のようすもなく、一見、奥行きはあるけれど、ぼんやりとした風景に見えます。

ところが、ふと空に目をやると、雲に気づきます。転じて地表に、うっすらと雲の影が落ちていることにも。雲を流す風と温かい日差しの存在に気づかされます。

光と影を究極に削った世界の開放感。
ただそこに在る、穏やかな視線。


●人物のいる室内画
≪室内、ピアノと黒いドレスの女性、ストランゲーゼ30番地≫
この絵を観たとき、自分が光を背にしているように感じました。
背を向ける女性の脇を通って、暗い(おそらく窓のない)小部屋を抜け、ドアの開かれた明るい部屋へ向かう・・・。想像したとき、瞼に光と影のコントラストを感じました。印象派のような強烈さではなく、風景画にも感じた、穏やかな光です。

鑑賞者を画中に引き込むモチーフは、ドイツ・ロマン派の流れをくむそうです。上であげた≪背中を向ける・・・≫に惹かれたのも、例えば「妻イーダ」或いは「コペンハーゲンのボウル」或いは、その風景そのものを描く目的=画家の主張を、感じなかったからかもしれません。


●人物のいない室内画
≪居間に射す陽光V≫
壁を背にしたソファと、キャンバスの半分近くを占める壁に射しこむ光が印象的な絵。この光には、なにやら意味を感じ取ってしまいそうです。人物もいない、選別された調度品と光だけの空間に、思わず引き込まれそうになります。

面白いのは、キャンバス下部、こちらから見ると手前に大きく床が描かれていることです。こちらを引き込む力がありながら、どこか一歩距離を置く、そんな風にも感じます。


イーダが背を向けているのも、床面積を大きく取るのも、主張させないための線引きのように思えます。それでいて冷徹さを感じないのは、開かれたドアや、その向こうにある光からくる、開放感のおかげでしょうか。

イーダが今にも振り返り、自分に(ハンマースホイに)微笑んでくれるのではないか、とまで想像を膨らませながら観ると、本当に楽しい作品だと思います。

ハンマースホイという名前もなにも知らなかったけれど、シンプルで温かみのあるデザインは、デンマーク家具そのもので、とてもよかったです。
展覧会は激混みでしたが、観たい絵は観れたし、大好きな画家が一人できた、とても有意義な時間でした。

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拙い感想記事でしたが、なんだか気になるな、と思って頂けた方へ
展覧会は最終日でしたが、NHKで特集番組があるそうなので、そちらでご覧頂けるかなと思います。再放送らしいです。ってわたしも見たことないので、今から楽しみです!

「アートエンターテインメント 迷宮美術館」
NHK総合
12月14日(日)14:15〜15:00
番組HP http://www.nhk.or.jp/bs/meikyu/


この記事へのコメント
こんばんは!ハンマースホイ、ご覧になったのですね。

ワタクシも先月見てきました(が、例によって記事にしてません・・・)が、すごくよかったですよね。

静寂の世界がなんともいえません。
義理の兄(イーダの兄)の絵は、同じような室内風景なのに、全く違う暖かな雰囲気で、画家の性格の違いがくっきりしてましたね。

私が行ったときはTV放映前(それを狙ってました)だったので、空いてて良かったですが、激混みだったのですか・・・。多くの人に見てもらいたいですが、混雑は困りますよね(^^;
Posted by しのぶん at 2008年12月09日 22:52
>しのぶんさま

しのぶんさん、こんばんは〜!
おお、やはり観に行かれてましたか。
TVといえば新日曜美術館で放送したらしいですね〜。いやあ、完璧見逃してました。実は、テレビと言っても、先日ニュース途中に流れた展覧会のCMで知ったんです。とてもラッキーでした。

>静寂の世界がなんともいえません。

そうそう!
人がいない室内画のコーナーでは「恐い」って感想も聞こえましたが、どちらかというと沈黙の幸福感という感じ。日々忙殺されている現代人にとって、癒しになるかも?

画集も購入したんですが、現物を見たあとだと一段と良いですね。寝る前にパラパラ見れるよう、枕元に置いてあります。

>義理の兄(イーダの兄)の絵は、同じような室内風景なのに、全く違う暖かな雰囲気で、画家の性格の違いがくっきりしてましたね。

同じような構図なのに、あんなに印象が変わるなんて驚きでした。暖かみのある絵を描くお兄ちゃんと、ハンマースホイに挟まれて、イーダはどんな気持ちでいたのかなーとか、関係ない想像もしてしまいマス。

展示の仕方が若干意図的な気もしましたが、なかなか意欲的な美術館という印象を持ちました。来年のルーブルもちょっと行ってみようかな。

>多くの人に見てもらいたいですが、混雑は困りますよね(^^;

上野公園?でなにか催し物があったようので、その影響だったかもです。
あ、でも、幼児を連れたような困ったさんはいらっしゃらなかったのが幸いでした。みなさん、静かにご覧になってました。よかったよかった〜。
Posted by tanizaki at 2008年12月11日 00:50
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