2008年02月24日

3月のライオン (1) / 羽海野チカ

3月のライオン (1) / 羽海野チカ

17歳、高校生プロ棋士の主人公・桐山零は、東京の下町で一人暮らしている。彼は幼い頃両親と妹を交通事故で亡くしていた。父の友人棋士幸田に内弟子として引き取られるも、現在はその家も出ている。

家も無い
家族も無い
学校にも行って無い
友達も居無い

アナタの居場所なんて
この世の何処にも無いじゃない?


羽海野チカ先生、待望の新作です。
主人公はプロ棋士。両親を失くし、嘘をついてまで手に入れた新たな居場所も失くし、彼はたった一人で将棋を指す生活を送っています。生きるため「好きだ」といった将棋、その居場所は今はもう手に入らないけれど、それでも彼は将棋を指しています。

主人公の抱える過去が見える度、悲しみや苦痛というよりも寂しさを感じてしまうような物語です。あることをきっかけに知り合った近所に住む三姉妹、同じ棋士で自称親友でライバルの二階堂、高校の先生や先輩棋士など、損得や同情抜きで彼に接してくれる人が登場し、彼らはみな同様に賑やかで温かく優しい。けれど主人公はその優しさに素直に甘えることができません。硝子一枚隔てたような。手を伸ばすことは勿論、差し出された手を取ることさえ躊躇っている節があります。

また主人公を気にかけてくれる三姉妹ですが、彼女たちも母親と祖母を亡くしているようで、父親の姿もなく、悲しみを抱えているのが主人公だけではないことが描かれています。お盆を迎えた三姉妹の中でも、いつも元気な次女ヒナの涙、頼り甲斐のあるいつも穏やかな長女あかりの表情を、主人公は見てしまう。

お盆の迎え送りを見て、亡くなった人を思い出して辛いだけじゃないかと主人公は考えます。彼は今目の前にある温かさを取らないと同時に、過去の悲しみまでも胸の内に仕舞い込み、心を動かさないようにしているのかもしれません。その象徴というわけでもないでしょうが、主人公が好きな川も、海と違い荒れることなくただ流れるものです。

「平常心是道」
幸田との対局室の壁に掛けられていた掛け軸に書かれていたこの言葉は、将棋を指すときの心得のようなものでしょうか。将棋は一対一向き合って指します。また自分と向き合い戦い続けるものです。研究も他の棋士とやるより一人の方が進むという主人公が、他者と関わりどう変化していくのか、変化することを恐れない日がくるのか、今後の展開に期待しています。

ただ三姉妹や主人公の過去(トラウマ?)が完全に明かされていないところを見ると、もしかすると当分は辛い展開が続くかもしれませんね・・・。個人的には喪失への答えというか、ハチクロから引き摺っている部分があるので、そのあたり見てみたい気もしています。

ところで、野球部員の子たちが試合のあともんじゃ屋に行こうと話しているカットがありましたが、月島っ子・・・いや東京の下町っ子は部活の帰りにもんじゃ食べに行ったりするんでしょうか・・・? 大阪ではたこ焼きでしたよ(笑) そういうどうでも良いところ(失礼)、本筋に関係ないところまで描いてあるのを見るとホッとします。自分の世界が中心ではない、今の悲しみが全てではないと言われている気がして安心できるんですねきっと。


この記事へのコメント
コメント・TBありがとうございました。プロ棋士って言う設定も驚きでしたが
零くんの明らかにされた過去も
あまりにヘビーでびっくりでした(涙)
全てを一人で耐え、生きている彼が、
3姉妹とのかかわりでどうかわっていくのか・・。
彼が心から笑える展開を祈りたいですね・・。

Posted by くろねこ at 2008年03月12日 23:51
>くろねこさま

コメントありがとうございます。
お返事遅くなり申し訳ございません。
確かに、ハチクロに比べるとずいぶんヘビーな印象になってますね。突き詰められた痛みそのものという感じです。

零や三姉妹がどういう生き方を選ぶのか、とても楽しみです。なんだかみんな不器用そうだから心配です・・・。
Posted by tanizaki at 2008年03月15日 02:23
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