2012年01月04日

今年はコレが凄かった!漫画2011

今年もやってまいりました!
漫画ネタ去年のコレ以降、丸1年ぶり??
その分、熱量高い内容でいきたいと思います。

と三日かかって未だ完成しないので、簡易版でとりあえずUPします。
個別感想記事出来上がり次第リンク繋いでいく予定。
→過去の日付で遡り個別感想完了。

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進撃の巨人(6) (講談社コミックス)
進撃の巨人(6)(講談社コミックス) / 諫山 創

ようやく戦略やらが見えてきて、本格的に巨人とのバトルかと思いきや、団長ら上層部の不穏な動き、女形大型巨人の登場など目が離せない展開へ。実写映画化決定したらしいですねおめでとうございます。と手放しで喜べないのは許して欲しい。この作品の独特なテンポとノリの実現には、悲観的な見方しかできない。

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アド・アストラ 1 ─スキピオとハンニバル─ (ヤングジャンプコミックス・ウルトラ)
アド・アストラ(1) ─スキピオとハンニバル─ (ヤングジャンプコミックス・ウルトラ) / カガノ ミハチ

ハンニバルと小スキピオによる第二次ポエニ戦争。
1巻ではとにかく魅力的なハンニバルに注目! スキピオという宿敵の存在が、ハンニバルのがらんどうの瞳にいったいなにを宿らせるのか、大変楽しみです。史実にどこまで忠実なのかわかりませんが、重すぎず軽すぎず、個人的にはちょうど良い塩梅でした。

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よるくも 1 (IKKI COMIX) よるくも 2 (IKKI COMIX)
よるくも(1)(IKKI COMIX)
よるくも(2)(IKKI COMIX) / 漆原 ミチ

街・畑・森、三つに分かれた階層社会。「畑」で母親とともに食堂を営むキヨコは、常連客の中田に頼まれ、青年・小辰の面倒を見ることになる。「森」出身の小辰は、無口でどこかぼんやりしていて、キヨコは気に掛けるようになるのだが、小辰は中田が仕込んだ暗殺者よるくもだった。救いは今のところ見当たらない。怖い。でもいつか小辰とキヨコの心が通い合うのだと信じて読み進めたい。

昨年表紙買いした中で一番残酷で面白かった作品。

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GUNSLINGER GIRL(14) (DC) (電撃コミックス)
GUNSLINGER GIRL(14) (DC) (電撃コミックス) / 相田 裕

5共和国派、ジャコモとの最終決戦。苛烈を極める戦いの中で、ジャン・ジョゼの兄弟、リコやヘンリエッタら義体の彼女たちが迎える結末。待ちに待った14巻が発売されました。

「イタリアはこの先10年停滞するな」
「いつかは出さなきゃならん膿さ」
「たまったものを全部吐き出して この国は生まれ変わるんだよ」

ヘンリエッタとジョゼがどんな結論を出すのか、あとは静かに受け止めようと13巻で覚悟を決めていました。次々見せつけられる現実。でも、これはなるべくして成った結末なのだとページをめくり、感情を表に出さなかったリコの悲痛な叫びに手が震え、トリエラとヒルシャーのカットでとうとう涙。人の手によって再び生まれた彼女たちに少しでも笑顔を・・・そう願っていたのに、待っていたのは、想像どおり悲惨で残酷な現実でした。

リコが引き金に指をかけたのは義体だからでしょうか。
それとも自我による自発的なものだったのでしょうか。
どちらかではなく、きっと、どちらも正しいのだと、今なら思えます。
リコは、人間だから撃てた。
ジュリアは、人間だから撃てなかった。

政治的な問題も残していますし、15巻ではもう一波乱ありそうです。
長かった彼ら彼女たちの戦いが、ようやく終焉を迎える。

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明治失業忍法帖 1―じゃじゃ馬主君とリストラ忍者 (ボニータコミックスα)
明治失業忍法帖(1) ―じゃじゃ馬主君とリストラ忍者 (ボニータコミックスα) / 杉山 小弥花

明治維新によって首になった元忍びの男と、女性として一人立ちしたい呉服屋の娘。二人が待込まれる事件の顛末がほぼ一話完結で描かれています。信念を失い空洞を抱えてふらふらと生きる男と、彼の本質を受け止め真っ直ぐに未来を見つめる娘。

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これは恋のはなし(1) (KCx ARIA) これは恋のはなし(2) (KCx) これは恋のはなし(3) (KCx ARIA)
これは恋のはなし(1) (KCx ARIA)
これは恋のはなし(2) (KCx)
これは恋のはなし(3) (KCx ARIA) / チカ

過去のトラウマを抱えたままの年上男に、少女は憧憬のような思慕を抱いている。ちなみに年の差は21歳。恋愛と言えるのか云々の前に、二人の抱える問題が深刻すぎてこちらの胸が痛くなる。表紙の二人の距離が徐々に近づいているのが気になっていて、次の巻がどうなっているのか早く見たいような見たくないような・・・。新井理恵さんの「子供達をせめないで」に近いかな。

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ばらかもん(4) (ガンガンコミックスONLINE) ばらかもん(5) (ガンガンコミックスONLINE)
ばらかもん(4) (ガンガンコミックスONLINE)
ばらかもん(5) (ガンガンコミックスONLINE) / ヨシノ サツキ

書道家・半田と、島の人々との日々を描いた日常ギャグ漫画。
なにかあるたびプッシュし続けてますが、今年も。

花火を見つめる半田の背中が大きく見えて、いつの間にか、この輪の中にいて当然になっていたのだと気づいて思わず涙目。最新刊で衝撃の展開を迎えてしばし放心状態です・・・。「オレが暇なうちは構ってやるか」って言ってたくせにいいい

4巻で仄めかされていたなるの家庭の事情は、しばらく棚上げなのだろうか。
半田が島になってきて4か月が経った。本来真面目で情の深い彼が、なるたちに黙って島を去るとは考えにくい。のだが、高校生組の進路の話を踏まえるとなにが正解なのか、半田にとってプラスになるのか全然わからないのが悔しい。だって島の生活は楽しい。でも100%ただの楽しさではなくて、夏休みのような期間限定なものに対する郷愁が含まれていることも、大人のわたしはわかってしまっている。その一方で、島で生活する基盤さえあれば移り住んでも構わないと思えるくらい、強い憧れもある。そんな葛藤を抱える半田を見ることになるんだろうか・・・。

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悪人を泣かせる方法 (ディアプラス・コミックス)
悪人を泣かせる方法 (ディアプラス・コミックス) / 雨隠 ギド

中学のとき怪我でボロボロな鷹尾と出会ってから、譲は片時も彼を忘れることができなかった。いつか鷹尾に会いに行くため貯め始めた資金は60億を超えてしまう。しかし再会した鷹尾は結婚していて・・・。「恋まで百輪」のサイドストーリー。

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イケズ彼氏の堕とし方 (ディアプラス・コミックス)
イケズ彼氏の堕とし方 (ディアプラス・コミックス) / 左京 亜也

コミックイベント会場でスカウトされた、エロ同人作家だった幸生。誘われるままパンツ漫画を書き続けて2年。連載は打ち切り、思うように描くことができないまま、担当編集者には人形パンツマンガとまで評されてしまう。ドS編集者×エロ漫画家。

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のぼせるからだ (ミリオンコミックス  Hertz Series 113)
のぼせるからだ (ミリオンコミックス Hertz Series 113) / ミナヅキ アキラ

整った顔立ちにコンプレックスを抱えたパン屋を営む若き店長・鈴見。ある日訪れた銭湯の番台にやたら目力の強い男前が座っていた。向けられる無遠慮な視線の理由を尋ねた鈴見に、男は整った顔立ちとアンバランスな腕の火傷痕を指摘する。

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「ONE PIECE」「ちはやふる」「月光条例」は今年も殿堂入り。
これほど高いレベルで何年も連載を維持されているのは最早脅威。団体戦が決着して個人戦へ向かう「ちはやふる」なんて少女漫画の皮被った少年漫画ですよ。それもスポ根もの!でもやっぱりちはやが可愛すぎて少女漫画ってズルイ! でもって自分「ばらかもん」好きすぎ。あんまり好きすぎて言葉にできない。

ここに上げていませんが、鈴木有布子「星河万山霊草紙」水城せとな「脳内ポイズンベリー」CLAMP「GATE7」山名ヒコ「王子様と灰色の日々」群青「まつるかみ」はまだ1〜2巻目が出ているだけ。どれも次巻から面白くなりそうな雰囲気があって今後の展開に期待してます。

2011年は、BLと百合関連があまり伸びなかった。
時間が取れなかったというより、興味をひくものが少なかったというか、読んでもあまり印象に残らなかった、というのが正直な感想。今年はもっと素敵な本と出会えるといいなあ。

2011年12月28日

のぼせるからだ / ミナヅキ アキラ

のぼせるからだ (ミリオンコミックス  Hertz Series 113)
のぼせるからだ (ミリオンコミックス Hertz Series 113) / ミナヅキ アキラ

整った顔立ちにコンプレックスを抱えたパン屋を営む若き店長・鈴見。ある日訪れた銭湯の番台にやたら目力の強い男前が座っていた。向けられる無遠慮な視線の理由を尋ねた鈴見に、男は整った顔立ちとアンバランスな腕の火傷痕を指摘する。

「顔でも食っていけそうなのに」
男・草羽の一言に鈴見は愛想笑いを返して逃げ帰ってしまう。
アイドルのような顔立ちが先立ち、恋愛でも仕事でも勝手に期待して失望した他人が、あっと言う間に離れて行ってしまうことを鈴見は身を以て体験している。腕に残った火傷の痕は、顔だけだと思われないよう努力し続けた証だ。28歳という若さで店を持てたのも、おそらく彼の実力だと思われるが、本人は自分に自信が持てないままでいる。

ひとめ惚れの勢いのまま猛アタックを繰り返す草羽は、がっしりとした体格で、映画の題字を書いたりテレビに出演するくらい有名な書家だ。男として成功した人間であり、おそらく恋愛で振られたことなどないタイプ。自分がどう見られているかわかった上で、鈴見をあの手この手で絡め取ろうとする。だが時間の問題だろうと高をくくっていたのに鈴見はなかなか首を縦に振らない。煩わしいことは避けながら上手く立ち回ってきたはずなのに、相手が見せたわずかな素顔が気になって、仕事にまで影響が出る始末。余裕ぶっていた大人の男が、実は真っ先に恋に堕ちていたのだ。

ミナヅキさんは、湿度の高い情念を嫌味なく描ける希少な作家さんだ。
短編「ゆびさきの恋」が一番好きなんだけど、雰囲気は残しつつ、コンプレックスや社会的立場などわかりやすい記号で間口を広げながら、更に読みやすくした感じ。話の展開に甘さがあった当時に比べると本当に隙がなくなった。単行本は年に1、2冊ペース。これからも変わらず書きたいことを思う存分描いて欲しい。

2011年12月26日

イケズ彼氏の堕とし方 / 左京 亜也

イケズ彼氏の堕とし方 (ディアプラス・コミックス)
イケズ彼氏の堕とし方 (ディアプラス・コミックス) / 左京 亜也

コミックイベント会場でスカウトされた、エロ同人作家だった幸生。誘われるままパンツ漫画を書き続けて2年。連載は打ち切り、思うように描くことができないまま、担当編集者には人形パンツマンガとまで評されてしまう。

ドS編集者×エロ漫画家。
別名義で少女漫画を描く作者によるBL初単行本。少女漫画の世界で戦っている作家さんだけあって、一話ごとの構成が滅茶苦茶うまい。王道展開なので先の先まで読めてしまうんだけど、お決まりのものが決まったときの快感を知り尽くしている感じ。

デフォルメされたキャラの絵も可愛らしいし、小さい書き文字も凄く丁寧。そういう雰囲気になってから気づくと下半身裸になってた!といったBL的お約束(笑)も、テンポとカットでうまく処理されています。メガネ編集・田中のいじめっ子ぷりを「イケズ」と表現するのはちょっと苦笑いですが、よくある受の性別を男性に変えたなんちゃってBLと違い、幸生の行動が(女子が想像する)男子高校生ノリというのも良かった。濃すぎず薄すぎず、適度にお馬鹿で適度に天然で適度に真面目。

Sっ気丸出しの田中が、どうして辛く当たるのか恋愛経験ゼロの幸生にはまったく理解できない。わけがわからないまま勢いで事を進めて、でも勢いだけではどうにもならなくなって、いつの間にか本気で相手を好きになっていて、体だけの関係が辛くなって、もうやめようと言い出したり。いっぱいいっぱいで感情のままの幸生の行動は一見、恋愛上の駆け引きのようにも見える。最後の最後に田中の本音が少しだけ明かされるのだけれど、二人ともお互いに振り回されているような気分だったのかなと思うと、可愛くて萌えた。

大胆なHシーンが毎回出てきますが、綺麗な絵柄なので軽く読めます。BLの基本はやっぱり少女漫画だと改めて思う。今の飽和状態のBL界に足りないものを、改めて知ることができる貴重な作品。

2011年12月25日

悪人を泣かせる方法 / 雨隠 ギド

悪人を泣かせる方法 (ディアプラス・コミックス)
悪人を泣かせる方法 (ディアプラス・コミックス) / 雨隠 ギド

中学のとき怪我でボロボロな鷹尾と出会ってから、譲は片時も彼を忘れることができなかった。いつか鷹尾に会いに行くため貯め始めた資金は60億を超えてしまう。しかし再会した鷹尾は結婚していて・・・。

譲を試すようなことを繰り返す、あまりに人の悪い鷹尾と、彼へ貢ぎに貢ぎまくる譲という典型的な破滅型カップル。お金大好きで性格最悪の(受)鷹尾に感情移入ができなくて、当然のことながら、一途に鷹尾を想う譲にも感情移入できず、一度目はさらっと読んでしまいました。

特殊な環境で育った二人は、「家族」や「愛情」を神聖視しているところがあった。
朝起きたとき一番に目に入るのが恋人の寝顔だったり、家に帰ってただいまと言えばおかえりと返ってくるだとか、毎日ご飯を誰かと一緒に食べて、次の休日の予定を考える。そんな穏やかな当たり前のような日常を、鷹尾は「夢みたいだ」と思った。幸せが一瞬で壊れることを知っている彼にとって、夢に溺れることは恐ろしい行為だったろう。唯一大事に想っていた弟妹から拒絶された経験が、彼を臆病にしている。今の幸せが壊れても自分が傷つかないように、特別なものを作らないように、彼はあることを試そうとする。

いざ強い愛情を向けられて幸せを感じて戸惑い、その愛情を失ってしまうことを恐れる、というのは王道パターンなのですが、普段弱みを見せない大の男がパニックのあまりとんでもない方へ向かってしまう展開に、猛烈に萌えた。その方向が、これまた駄目ダメすぎて呆れてしまったのだが、病室に駆け込んできた鷹尾を見て、悔しいけど許してしまう譲の気持ちも痛いくらい良くわかってしまった。愛してるとも大事だとも口にしてくれない皮肉屋の想い人が、自分のせいでぐちゃぐちゃになってしまったときの快感といったら!

相手が特別なのだとお互いが腹を括るきっかけが、他人の言葉や事故で片付けられたのがちょっと物足りなかったけれど、まわりの人間からすればすっかりハマっているようにしか見えないのに、最後までジタバタと悪足掻きする駄目な大人と、それに振り回されているようで実はすでに主導権を握っている年下男。どうしようもない二人が泣いたり泣いたり泣いたりするさまは、とても可愛らしくって良かった。

退院後にはデレた鷹尾が見れます(にやにや)

2011年12月24日

明治失業忍法帖(1) / 杉山 小弥花

明治失業忍法帖 1―じゃじゃ馬主君とリストラ忍者 (ボニータコミックスα)
明治失業忍法帖(1) ―じゃじゃ馬主君とリストラ忍者 (ボニータコミックスα) / 杉山 小弥花

明治初め、商家伊勢屋の娘・小松菊乃は、親の決めた結婚相手・柘植清十郎の昼間から酒を吞むぐうたらな姿に怒り心頭。しかし彼は、幕府直参の元伊賀忍だった。

明治維新の折、幕府から暇を出されたきり、立身出世に興味を示さず無為な日々を送る清十郎は、まるで浮草のような人だ。薩長との戦い、大政奉還と激動の時代の只中で命を賭けて戦っていた彼は、努力や正義といったお題目で多くの人が死んでいくさまを目にしている。絶対的な時代の潮流の前で、それらがいかに無意味なものか、身を以て体験している。時代に逆らわず、己を捨てて生きること。今の清十郎の願いはただそれだけだった。

一方、髪も結わず男袴で町を闊歩する菊乃。女学院に進み将来は職につきたいと願う彼女は、家族を含めた周囲から奇異の目を向けられている。ある事件をきっかけに、清十郎と主従関係を結び、他の縁談が持ち上がり女学校への夢が断たれることないよう、仮の婚約まで交わす。行動力と好奇心旺盛な菊乃は事件に巻き込まれ、自ら首を突っ込んでいくこともしばしばだが、そのたび主君の一大事と言って、清十郎が手助けに入る。

収録されている5話目が抜群に良い。
落ちぶれた元武士と、元婚約者の芸者の話。職を失い商いを始めるも客に頭を下げることも、金勘定もしない男。女の身請け話が持ち上がり、菊乃はなんとか二人を一緒にしてやりたいと奮闘する。清十郎の力添えもあり、無事に二人を江戸を出すことに成功したのだが、この話、大団円に見えて裏があった。
維新後武士として死ぬこともできず、恋しい女への想いだけで生き永らえてきた男にとって、このときすでに生きることは恥の上塗りでしかなかった。女が裕福な生活を得て幸せになることを見届け、彼は自害するつもりだったのだ。二人を見送った数日後、清十郎の開いた新聞の片隅に、「男の切腹死体」「近くに女性死体あり後追いか」との文字が読める。結局、武士としての生き方しかできなかった男と、それを良しとして付き従った女の結末。すべて見通しながら、菊乃の真っ直ぐな望みを無理を承知で叶えた清十郎は、男女の死を菊乃の目から隠すことを選んだ。

男女の行く末を悲劇と取るかは個人の価値観によって違ってくる。冷たい言い方かもしれないが、自害した二人は各々の価値観を信じて果てたのであって当人らの自己満足の結果に、菊乃が左右される必要はない。少なくとも正義の下で行ったことが、結果すべて善にはならないと、今回の一件で菊乃は学んでいる。

忍びとしての恐ろしい一面を見ても、変わらず接してくる菊乃に、清十郎は何度も救われる。変化し続ける世界を憎み、いつかぼろぼろになった世界で彼女を優しく殺すことを夢想しながら、どこか非情になりきれない清十郎。凪いでいた彼の世界に、いつの間にか波が立ち始めている。

杉山さんの「当世白浪気質」は、今でもときどき読み返すほど好き!
今回も、夢破れ胸に空洞を抱えた年上の男と、男を受け止め包み込む女。でも恋愛は奥手というところに少女性を感じてきゅんきゅんきた。この人の作品は、男の性格が捩じれすぎていて、一読では理解が追いつかないこともあるけれど、どこか後ろ向きで、クールぶっているくせに実は情に厚く、シャイで弱い自分を必死になって隠しているあたりに庇護欲がくすぐられて困る。菊乃と一緒になってそんな清十郎を「かっわいい〜」と眺めながら、頬染めて清十郎を見つめる菊乃の方がなにより可愛かったりして、見てるこっちのが恥ずかしい気持ちになります。

2011年12月23日

よるくも(1)(2) / 漆原 ミチ

よるくも 1 (IKKI COMIX) よるくも 2 (IKKI COMIX)
よるくも(1)(IKKI COMIX)
よるくも(2)(IKKI COMIX) / 漆原 ミチ

街・畑・森、三つに分かれた階層社会。「畑」で母親とともに食堂を営むキヨコは、常連客の中田に頼まれ、青年・小辰の面倒を見ることになる。「森」出身の小辰は、無口でどこかぼんやりしていて、キヨコは気に掛けるようになるのだが、小辰は中田が仕込んだ暗殺者よるくもだった。

裕福な者が住む「街」と貧しい者たちが住む「畑」、その下にある「森」
生まれ育った居住区による差別化がなされている世界。そんな中訪れる人間を区別なく受け入れるキヨコと母の営む中岡飯店はとても繁盛している。誰とでも分け隔てなく話す母と、明るく可愛らしい娘。キヨコの飯はみんなもので、母娘はみんなにとっての癒しだった。

自分たちは人間ではないと思うことでしか耐えられないような出来事を通過して生き残ったのが中田だ。彼は荒磯精肉店の店長であり、荒磯の裏の仕事を引き継ぐ担当でもあった。行き場を失くした子供たちを使い捨ての暗殺者に育て上げ、汚い仕事を一手に引き受けている。そうして出来上がった一人が小辰=よるくもだった。よるくもには痛覚がない。字の読み書きもできない。感情がない。命令に従って暗殺を行うが、行為自体に喜びも苦痛も感じない。感情を殺しているのとも違う。楽しい悲しいといった言葉の意味は知っていても、そもそも彼の中に愉快や不快といった感覚すらない。倫理や社会といった判断基準を持たないよるくもは、ただ命令どおり仕事をしている。

母親が亡くなり、小辰と中田と暮らすことになったキヨコ。
語彙力の足りない小辰の言葉は、故に純粋なものに聞こえる。小柄でちゃきちゃきした普段元気なキヨコは、思わず小辰へ弱さを吐き出す。感情に乏しい青年が明朗快活な少女と出会い人間としてのなにかを取り戻していく物語。であれば良かったのだが、この作品には今のところそんな救いは一欠けらも存在しない。小辰によって救われたキヨコが、小辰によって地獄へ突き落される。

キヨコの母が隠していた差別意識、中田の憤り、周囲の人間たちの悪意のない言葉。善良な人も存在するが、狂気に満ちたこの世界では、わずかばかりの善意など吹き飛んでしまう。生きること、食べること、殺すこと。キヨコの目を通して描かれる「森」の風景の中に、それらが詰まっている。

2011年12月22日

アド・アストラ(1) / カガノ ミハチ

アド・アストラ 1 ─スキピオとハンニバル─ (ヤングジャンプコミックス・ウルトラ)
アド・アストラ(1) ─スキピオとハンニバル─ (ヤングジャンプコミックス・ウルトラ) / カガノ ミハチ

紀元前三世紀、共和制ローマとカルタゴは、西地中海の制海権を賭け争っていた。領土の拡大を続けるローマに押され、誇りを見失いかけたカルタゴを再び立ち上がらせたのは、10歳にも満たない少年だった。

カルタゴの守護神バールの恵みと意味を同じくする名前を持ったハンニバル。神に選ばれた子、バールの子と讃えられながら、感情の宿らない瞳を持った少年は、やがて人々の心を掴みローマを脅かす存在へと変わっていく。月日が流れ20代の彼は、立派な統率者となった。ガリア人たちに対する演説、戦場での行動は、自信と熱意に満ちている。幼いときの無表情とも、大人たちの前で見せた人を蔑み嘲笑うような表情とも違う、民衆や軍を率いる者として理想的な雄々しい姿。常識を覆すような方法で、ハンニバルは人心を掌握していく。

一方幼いハンニバルの狂気を見せつけられたのは、ローマの執政官スキピオだ。
今後は彼の子供(小)スキピオがハンニバルと戦うことになるのだが、1巻では父親のスキピオの目線でたびたびハンニバルが描かれている。ローマに敗れ言いなりになっていたカルタゴの兵士たちが、幼いハンニバルの扇動によって牙を向いた瞬間をその場で見ていたスキピオには、ハンニバルが怪物に見えてしまう。名将と謳われるスキピオですら、幼いハンニバルから植えつけられた「本能的な恐れ」に囚われていたのだ。

彼の息子である小スキピオは、唯一ハンニバルに対抗できた人物だったとか。もし幼いときハンニバルの狂気の洗礼を浴びていたら、小スキピオはどんなふうに育っていただろう? 想像するだけで楽しい。

世界史に明るくないので先が読めないおかげで楽しめました。
周辺国家や人種についてはほどほどに触れるばかりで、知識を詰め込んだ歴史ものとは少し違いますが、逆にこれくらいの量の方が、登場人物たちに目が向いて物語に集中しやすかった。2巻以降は小スキピオの目線で物語が進むらしいですね。ハンニバルが魅力的な人物なだけに、小スキピオについてどこまで描けるかが肝になりそうです。

2011年12月21日

進撃の巨人 / 諫山 創

進撃の巨人(6) (講談社コミックス)
進撃の巨人(6)(講談社コミックス) / 諫山 創

主人公エレンは、城壁の外の世界を見るため調査兵団に入ることを夢見ていた。しかしある日突然現れた巨人に親を殺され、夢は具体的な目標へと変わる。調査兵団に入り、巨人を残らず駆逐するという目標へと。

設定を少しずつ公開する手法や、年数にこだわっているようすは、ガッチガチの厨臭がプンプンなのですが、4巻あたりから面白くなってきた。そもそもこの漫画はいったいなにを描こうとしているのか考えたい。「巨人対人間の戦い」始めはそう思った。しかし主人公エレンの秘密や、意志を持つ女形大型巨人の登場により、一気に物語は混迷する。目に見える外敵と、腐敗が進む内政。恐怖による駆除は簡単だ。生捕りにした巨人を前にしたとき、巨人に襲われた記憶を思い起こすとき、彼らは否応なく己の恐怖心と向き合うことになる。恐怖に打ち勝つしか生き残る道はない。

ただ予感だけがある。この作者とんでもない隠し玉を持っている。実写版映画化が決定したと聞いたが、隠し玉の内容によってはこの作品、大化けするかもしれませんよ?

ところで、個人的に好きなところはシュールさ。
冗談と本気の区別が曖昧なところ。6巻でエレンと団員たちがパニックに陥るシーンがあるのだけれど、彼らが至極真面目であればあるほど滑稽に見えてしまう。巨人への恐怖が大きくなるほど、彼らの極限状態と日常の振り幅も大きくなるわけで、その独特なテンポと間合いが面白い。大胆な構図、コマ割りも見どころ。全体像はぼんやりしているのに、立体起動といった細部は緻密。荒削りで拙く見えて、このアンバランスさが魅力だと思う。

最新6巻ではようやく城壁の外に出た。
調査兵団が培ってきた対巨人戦略にワクワクが止まりません。
この作品の真価が問われるのは、おそらくここから。

2011年01月03日

今年はコレが凄かった!漫画2010

今年もやってまいりましたー!
ナツ100がなくなり、一年の中でとっとき熱い記事かもしれません?
(久し振りに長い記事書いた・・・。<おい)

【ご注意】今年は同性ものとジャンル分けしておりません。


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天にひびき 1巻 (ヤングキングコミックス) 天にひびき 2巻 (ヤングキングコミックス)
天にひびき 1巻 (ヤングキングコミックス)
天にひびき 2巻 (ヤングキングコミックス) / やまむら はじめ

ヴァイオリンを学ぶ秋央と、指揮者を目指す天才ひびき。天才のもつ音楽に触発され、惹かれあい化学反応を起こすようすが、ときに軽いタッチで、音大の仲間たちの交流とともに描かれていく。

小さいときに聞いたひびきの音が忘れられずに、自分の将来すら思い浮かべられなくなった秋央の苦しみは、絶望的と言ってもおかしくなった。その意味を認めることができず、ただじりじりと胸が焦げるような嫉妬と、これまでの自分の音への葛藤、ヴァイオリンを弾く以外授業すら面倒になるほどの焦燥感。秋央の努力が見えるだけに辛い。2巻の最後ではようやく自分の方向性が視えたようで、ひと安心です。とはいえ、小さい頃海外へ行ってしまった幼馴染の帰国もあり、まだまだ秋央が休まることはなさそう。

ただ「努力家から視た天才」だけでひびきを終わらせるのは勿体無いかな。
2巻で顔を出した、楽器を持たない指揮者の悩みが、ひびき側でどう描かれていくのか期待したいです。

ひびきの全身で音楽を楽しむ姿勢が眩しい。
心が揺さぶられて、まさに駆け出したくなるような作品です。

個別感想
1巻 http://zinc-unit.seesaa.net/article/139371465.html

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ましろのおと(1) (月刊マガジンコミックス) ましろのおと(2) (月刊マガジンコミックス)
ましろのおと(1) (月刊マガジンコミックス)
ましろのおと(2) (月刊マガジンコミックス) / 羅川 真里茂

津軽三味線の師匠だった祖父が亡くなり、上京してきた雪。
彼は体が空っぽになってしまうほどの喪失感ですら、持て余しているように見える。

勝ち負けに拘る郷里の幼馴染、存在感があり精力的な母親を苦手とし、兄や母からの金に手をつけないようすから、雪の幼さゆえの純粋さ、潔癖さがよくわかる。自分が好きで弾く以外、興味がないと言う彼を、バンドボーカルとして(インディーズながら)戦っている男は「随分と本気な趣味だな」と評した。同じ土俵にも上がっていない「聴く人に育てられるタイプ」と言ったのは、全国大会優勝者である三味線奏者。

戦時中食べるために生きるために弾いていた祖父。
コンクールに出て一番になりたい、たくさんの人に音を届けたい、あの子には負けたくない、なにかを成し遂げたい、誰か「私」に気づいて欲しい。数え切れないほどの願望や希望、欲望に巻き込まれながら、雪はどこへ進むのか? 流されるままに生きている雪だけれど、おじいさんの音真似から一歩前に踏み出せた彼なら、きっと大丈夫。

連載誌は月刊少年マガジン。
羅川さんの作品が、少年誌掲載でどう変化するのか楽しみ!
母親主催のコンクールって流れがいかにも少年誌っぽいけど、熱い展開に期待期待!

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ジゼル・アラン (1) (ビームコミックス)
ジゼル・アラン (1) (ビームコミックス) / 笠井 スイ

主人公はアパートの大家で「何でも屋」を始めたジゼル。
町中で背の高いお屋敷、掃除も身支度もメイドがやってくれていた彼女にとって、町の人々の生活や感情の移ろいが新鮮で興味深いようだ。子供らしい屈託のなさや独り善がりが目に付く一方で、品のある仕草や嫌味の語り口が上流階級の出自を感じさせる。

20世紀初頭のヨーロッパをイメージしたような時代設定と、活気付く町のようす、登場人物たちの着る衣装にいたる細部までディティールが美しい。なにより、再三にわたってあえて書きますが、おかっぱ黒髪、ぱっつん前髪に太い眉、ぱっちりグリーンアイズ、ころころ変化する表情、品のある立ち居振る舞い! ジゼルの容姿がどストライクなんです!!あーかわいや〜。

表紙の裏地、中表紙まで壁紙のような素敵な模様がプリントされていたのも、大変気が利いていて、気に入りました。なんというか、こういう細やかな部分にきゅんときますね。実際の事情はわかりませんが、デザイナーさんや制作さん?作っている人たちが、この作品を大切にしているんだな〜と思うと、無下に扱えないというか。装丁が可愛いので、本としても満点!

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東京ラストチカ(1) (アヴァルスコミックス)
東京ラストチカ(1) (アヴァルスコミックス) / みよしふるまち

明治43年を舞台にした子爵と女中の恋物語。
弟と離れ有馬家へ奉公に出た花は、その家の新しい当主となる光亨と出会う。悲しみを堪えて喪主を務めているかのように見えた光亨だったが、実は昔父親に夢を奪われ、その父が亡くなったため家督を継いだにすぎなかった。

大雨による大洪水、花の母親の死の原因。一気に西洋化へと向かった時代、その波に取り残された人々は、病に苦しみ亡くなっていった。時代考証まで詳しくわかっていないくても、当時の日暮里や浅草のようすやコレラの流行などなど、知っていると頷ける、ポイントを押さえた良作。華やかな表と、その裏に漂う不穏な気配もちゃんと出てます。

若干子爵さまと女中の恋仲への展開が早いような気もしますが、この後、桜を見ることができないような展開になるとすれば、まあ妥当なところでしょうか。ありきたりな設定ですが、透明感のあるタッチで丁寧なのが好印象ですし、読ませる作品だと思います。昨年一番の表紙買いでした。

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フットボールネーション 1 脚のきれいな選手求む! (ビッグコミックス)
フットボールネーション(1) (ビッグコミックス) / 大武 ユキ

東京クルセイド セレクション条件「脚のきれいな選手」
世界で戦えるフィジカルとセンスを育てて、日本をサッカー先進国に!

これまでのスポーツ漫画にはなかった系統。斬新で面白い試みがたくさんある。
かっちりと引かれたコマ割りは、試合中でもほとんど崩れることがない。集中線や曲線を極力配された紙面は、躍動感やスピード感を捨てる替わりに、シャープさを生み、テレビ観戦をしているときのように(人物たちの動きや試合の流れに)集中することができた。

スポーツを漫画にするとき難しいことはなんだ?
それは「全体」を描写することの困難さに比例する。常に俯瞰したカットを描いても、漫画にはならないから。この作品の面白いところは、選手の視点を観ている側に感じさせることで臨場感を得ているところ。今後、人物の感情を描くようになったときどうなるのか未知数だけど、期待も含めて。インナーマッスルの重要性が懇切丁寧に描かれた1巻。日本サッカー界全体が抱える数ある問題の中で、育成に重点を置く姿勢が、長年日本サッカーを追い掛けてきた作者の、この競技に対する情熱がよく出ていると思う。

これ読んでから尻下の筋肉を意識して歩いたり・・・。
インナーマッスルとダイエットの一節にも、思わず納得。

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ばらかもん(3)(ガンガンコミックスONLINE)
ばらかもん(3)(ガンガンコミックスONLINE) / ヨシノ サツキ

エリート書道家・半田清舟と、島の住人との交流を描いた日常コメディ。

逃した大賞の主を目の前にしても、半田の心はもう揺らがなかった。我を忘れて子供たちにまで暴言を吐いた1巻の彼からは、想像がつかないほどの変わりようだ。半田自身は島に来て自分が変わろうとしているのを感じながら、どう変わればいいのかまだわからずにいる。大賞を獲った神崎もまた、目標としていた半田が変わってしまうことで、自分のこれからをどうすればいいのか見失っていた。

東京にいれば良い書が書けるのか?良い書とはなんなのか。
変化を怖がる神崎と、変化に戸惑う半田。二人の目を空に向けさせたのは、なるの突拍子も無い行動だった。息詰まった彼らに笑いを運んだのも、なるのアイデアとヒロや美和の行動によるものだった。気張ることなく起こした行動や発した言葉が、それが回り回って誰かを助けることになるなんて、これほど素敵なことはない。そんなやさしい奇跡を、この作品はいつも見せてくれる。馬鹿馬鹿しいのに、笑いすぎて涙が出るくらい、心にじんわり沁み込んでくる、ほんとうに温かい作品です。1巻に感じた島生活の難しさや厳しさがあまり出てこなくなり、日常コメディ化してしまったのが、少し残念ではある。

昨年に続けて、何かにつけ選んでますが、もうそれくらい大好き!
同時発売だった「みしかか!」には美和とたまが出てました。
美和の島に帰るよって台詞に救われました。

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かきかけとけしいん (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)
かきかけとけしいん (IDコミックス ZERO-SUMコミックス) / たし

小さい頃母親に置いていかれ、育ててくれた祖父母が亡くなってからは叔母の元に預けられていた少年いの。ぶっきらぼうで怖い青年ろくとの出会いは、少年をすこし成長させる。

このおじさんろくも普段から眉間に皺を寄せ、初対面のいのに子供は嫌いだと言い放つあたり、完璧な大人として描かれていないところが良い。その一方で、近所付き合いを大事にしていたり、在宅ワーカーなりに田舎暮らしの大変さも心得ている。少年にとって気難しく見えた怖い人間が、まわりとの関係を円滑に運んでいるところに、少年が多大なる影響を受けたことは、続編に登場する中学生いのを見れば一目瞭然だ。

子供扱いされてもされなくても反発しまくっていた、性格のひねくれた少年が、普段ぶっきらぼうなろくの言葉や行動に隠された優しさによって、誰かに大切にされている実感を持つ流れが、とてもわかりやすく巧み。想われることに少し貪欲になってしまう子供の気持ちが、痛いくらいよくわかる。ろくに抱き締められてホッとしたのと、自分が子供だと実感したのと、その後に続くいののモノローグが好き。

中学生のいのが「自然でカッコイイ」のは、ろくさんのおかげですね!!
というのは冗談として。
いのが釣りを自然にこなすようすや、みんなに秘密の場所を持っているところを、同級生はカッコイイと感じる無邪気なカット。成長した少年に頼もしさを感じる一方で、周囲から教えられたことが一人でできるようになるにつれ、いのは全ての責任を負う厳しさも知ることになったはずで、勇気を出して小学校に通い始めて一人遊びがうまくなるまでどんなことがあったんだろうと、勝手な妄想が膨らみます。

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ナイフエッジガール (IDコミックス 百合姫コミックス)
ナイフエッジガール (IDコミックス 百合姫コミックス) / 古街 キッカ

短編三作品収録、どれも好きです。
特に表題の「ナイフエッジガール」が良かった。
中学卒業後就職して免許も新車も持っているちゃんとした社会人の亜衣と、弁護士を目指している受験生エミリ。受験直前不安になってやってきたエミリを、始めこそ突っぱねながらも受け止めてしまう面倒見の良い亜衣。たった3〜4ページで二人の関係性を見せる構成力、幼馴染で長い付き合いだからこそ発生する不安や焦り、最後に訪れる幸せの予感。どれもほどほどに配分されていて、それでいてとても満たされた気持ちになる不思議な作品でした。新人さんとは思えない落ち着きっぷりです。

アマゾンのレビューにもあるとおり、擬似男女恋愛のような百合ではないのが新しいですね。彼女たちが普段交わしてるメールや電話なんかを想像してニヤニヤできちゃう感じ。(あれが面白かったこれが美味しかったってエミリの長い長い報告にも、亜衣ちゃんは相槌くらいしか打たないんだろうとか、わあわあ言ってるエミリが可愛くて仕方ないんだろうなあ、でもそんなこと思ってる亜衣ちゃんを見て、エミリはきゅーんとしてるに違いないとか考えると萌える(長い))

(以上、以前書いた記事から転記)
百合ものの中でも読み返した回数が一番多かった作品。
作品全体に言えることだけれど、エミリと亜衣の抱える不安や、「glaffiti」のかなとりせのワクワクした感じがよく出ていて、心の機微がとても丁寧に描かれているのが良い。その点「トゥルトフロマージュ」は少しご都合主義すぎる気がします。これからたくさん読みたい作家さんです。

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共鳴するエコー (まんがタイムKRコミックス つぼみシリーズ)
共鳴するエコー (まんがタイムKRコミックス つぼみシリーズ) / きぎ たつみ

4作品を集めた短編集。
それぞれの登場人物たちが繋がり広がっていく、まさに共鳴する作品集。

「ランナーズ・ハイ」親友に怪我を負わせてしまったことを気に病む女子高生。「アンバランス」ボーイッシュな友人とそれを楽しむ生徒会長。二人は仲良し。「アシンメトリ」見た目はそっくり、中身は正反対な双子ちゃんズ。それぞれうっすら漂う押しの強さが、ツボをつきまくる作品。

他と比べて長めになっているのが「ロンサム・エコー」
赴任先で出会った不思議な女の子ヨーコ。心に深い傷を負った律子にとって、ヨーコのヴァイオリンに合わせてピアノを弾いているひとときは心の休まる時間だった。少しづつ楽しい時間が増えていくところはお見事。ある事件によって穏やかな時間は壊れてしまうのだけど、この流れがあるとないとでは、ヨーコの怒りの説得力が全然違う。「悩んでる女性を颯爽とかっさらう」ヨーコは本当に格好良かった。その一方で、親の権力を傘にやりたい放題に感じていた行動も、おまけの設定公開ページを読んですんなり納得。ページ数と展開の関係上切った部分とはいえ、まだまだ広がりを感じさせるもったいない設定。この後の二人設定でも良いので、ヨーコ視点が読みたいです。

というより、出来上がった二人を書かせた方が、断然面白い作家さんじゃないかと思う。

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恋まで百輪 (ディアプラス・コミックス)
恋まで百輪 (ディアプラス・コミックス) / 雨隠 ギド

将来ヤクザの祖父の跡を継ぎたい小太郎だが、ある日ひったくりを捕まえる青年を見かけた。青年の姿に「理想の兄貴像」を見た小太郎は、彼が花屋だと知り、毎日お店へ通うようになる。

実は花屋の青年も元ヤクザ、しかもムショ帰りというから話はややこしい方向へ。家がヤクザ稼業とはいえ、両親の離婚から祖父の家に住むことになり、幼い頃からの任侠好きが高じて、跡を継ぐと言ってる甘ちゃんの小太郎である。彼が周囲から可愛い可愛いと育てられたことを、青年・虎二はちゃんと見抜いていた。育ちの良さからくる小太郎の真っ直ぐで無邪気な性格に、虎二は何度も救われる。自分の過去、組とのゴタゴタ、家族との不仲、何度も。気づいたときには心の真ん中まで、しっかり食い込んで離れなくなっていることに驚いたのは虎二自身だった。

基本的にギャグっぽく、終始明るく進んでいくので安心。恋愛に対して小学生くらい奥手な小太郎の態度に、思わず吹き出してしまうくらい。夏目イサク先生推薦の帯には「読んできゅーんとして下さい」とありますが、間違いありませんでした。昨年一番きゅんとした一冊!

ギドさんは一般誌の方で知っていたのですが、これが初BLとは思えません。
読み手のツボを心得てらっしゃる(笑)

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かわいさ余って何かが百倍 (アクアコミックス)
かわいさ余って何かが百倍 (アクアコミックス) / エンゾウ

流され体質の年上サラリーマンと、花屋に見えないオーナー青年の話。

会社で取引している花屋のオーナーに、三國は男性上司との不倫現場を目撃されてしまう。オーナー一ノ宮の罵りに激昂しながら、垣間見える彼の不器用なやさしさにほだされていく。元来流されやすい性格も相まって。不毛な不倫関係に疲れていた三國は、一ノ宮の強引なところを、自分を必要としているからだと喜んでいる。彼にとって恋愛とは、相手からなにか貰えるのをじっと待ち続けるだけのものだったのだろう。耐えることがクセになり、相手に合わせることが常になり、とうとう自分の気持ちを脇に置くようになってしまった。その彼が、あることをきっかけに、一ノ宮に対して自分の欲望願望を口に出すことになる。

これは久し振りに濃厚なエロとストーリーが同居する読ませるBLだった。
一ノ宮の言葉攻めとややキツイ態度はまさに「キチク」!(これをカナで評したライターさんの素晴らしいこと!) 実は子供臭い独占欲から来る俺様だと判明する2話目など、本当にうまい展開。押しに弱い受と長髪が苦手でしたが、主線が太い絵柄と、受攻に関わらず男らしい体型や顔立ちのおかげで、最後までついていけたのだと思います。

収録されている短編も良かった。
オカマやゲイといった際どい単語も出てきますが、どちらもしっかりとした信念を持って描かれているので、不快な感じはまったくありません。今年たくさん読みたい作家さんです。

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本当なら完結した「のだめカンタービレ」「鋼の錬金術師」も入れるところですが、凄かったとはちと違う気がして外しました。尚、引き続き「ONE PIECE」「ちはやふる」「月光条例」は熱くそれぞれ大変な展開を見せており、すでに自分の中で殿堂入り(なんじゃそりゃ)ということで外しました。

百合が豊富な一年でした。
なかよし・りぼんなど一般少女誌で連載始まったときは、どうしようかと思いました。本家では「つぼみ」「ひらり」「百合姫」から次々と新刊が発行され、大変刺激的な作品が増えており、マーケットの広がりが興味深いことになってきました。ありがたいことです。

昨年目標にしていた少年漫画の開拓はまあまあ満足。
不足しがちだった少女漫画の新規開拓を、今年は進めたいと思ってます。
はあ〜、今年も多くの良作に出会えますように!

2010年08月16日

最近買った漫画あれこれ

しばらくぶりですこんばんは。
本当に暑い日が続いておりますがみなさまどうお過ごしでしょうか。
落ち着いて更新できるまでもう少しお時間を頂きます。

ナツ100がない代わりに、tanizakiが最近どきゅーんときた漫画載せときますです。
記念すべき漫画カテゴリ100件目なので(勝手に)しっかりレビューしよと思ってたけど全然目処が立たないのでもういいやってことで!

BUTTER!!!(1) (アフタヌーンKC)
BUTTER!!!(1) (アフタヌーンKC) / ヤマシタトモコ

ほぼ同時発売の「HER」「ドントクライ、ガール」も良かったけど。
人間のグロさや電波っぽい部分が削られて間口の広い作品です。なので色んな人に薦められると思います。独特の間とテンポをカットで見せる漫画家さんですが、高校生+社交ダンスの「動」作品に挑戦されているのも面白いです。まだまだぎこちない感じだけど、これからどこまで行くのか楽しみであります。

登場人物の黒い部分(掛井のあだ名、夏の隠れヒップホップ)はさすがヤマシタさん。
嫌味がなく品があるのに、時々グサっとくるくらい残酷なことを描く人。

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女王の花 2 (フラワーコミックス) / 和泉かねよし

やっっと出ました「女王の花」二巻!
あれから2年・・・待った甲斐がありました〜。
幼かった亜姫と薄星の二人が少し成長して、ともにいることの困難さを知ることになるのだけど、困難だからこそ尚更深まる絆の強さ、想いの深さという展開。個々の人間ではどうすることもできない歴史の流れがある。歴史ものは小説・漫画に関わらず、読み物として楽しめなくなってしまうくらい理不尽な出来事が描かれることも少なくない。激しさを増す時の流れの只中で、必死に前に進もうとする二人に、思わず握りこぶしを作ってしまう。次巻はもう少し早く出るといいなあ・・・。

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ジゼル・アラン (1) (ビームコミックス)
ジゼル・アラン (1) (ビームコミックス) / 笠井スイ

主人公はアパートの大家で「何でも屋」を始めたジゼル。
20世紀初頭のヨーロッパをイメージしたような時代設定で、ジゼルや登場人物たちの着る衣装が細部まで美しい。おかっぱ黒髪、短い前髪から覗く強情さが現れた太い眉、好奇心に輝く大きなグリーンアイズ。ジゼルの容姿がドンピシャ好みなのです。(ストリップの意味がわからなくてお嬢様育ちを馬鹿にされて悔しがる表情にぐっときた人ー。はいー) 新人作家らしくキメ顔がみな同じに見える欠点はあるものの、ジゼルのころころと変化する表情はとても可愛らしい。

実は町一番のお金持ちのお嬢様らしいことや、アパートの住人エリックたちとの関係など、事件−解決の繰り返しの中で少しづつ見え始めた人物設定にも注目です。

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ナイフエッジガール (IDコミックス 百合姫コミックス)
ナイフエッジガール (IDコミックス 百合姫コミックス) / 古街キッカ

短編三作品収録、どれも好きです。
特に表題の「ナイフエッジガール」が良かった。
中学卒業後就職して免許も新車も持っているちゃんとした社会人の亜衣と、弁護士を目指している受験生エミリ。受験直前不安になってやってきたエミリを、始めこそ突っぱねながらも受け止めてしまう面倒見の良い亜衣。たった3〜4ページで二人の関係性を見せる構成力、幼馴染で長い付き合いだからこそ発生する不安や焦り、最後に訪れる幸せの予感。どれもほどほどに配分されていて、それでいてとても満たされた気持ちになる不思議な作品でした。新人さんとは思えない落ち着きっぷりです。

アマゾンのレビューにもあるとおり、擬似男女恋愛のような百合ではないのが新しいですね。彼女たちが普段交わしてるメールや電話なんかを想像してニヤニヤできちゃう感じ。(あれが面白かったこれが美味しかったってエミリの長い長い報告にも、亜衣ちゃんは相槌くらいしか打たないんだろうとか、わあわあ言ってるエミリが可愛くて仕方ないんだろうなあ、でもそんなこと思ってる亜衣ちゃんを見て、エミリはきゅーんとしてるに違いないとか考えると萌える(長い))

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スリーピングビューティーの見た夢 (IDコミックス 百合姫コミックス)
スリーピングビューティーの見た夢 (IDコミックス 百合姫コミックス) / 四ツ原フリコ

短編集のうち「六畳半、周回遅れ」にニヤニヤしっぱなしですよ!
百合らしい百合なのだけど、二人の見た目とパワーバランスが逆転しているところが特徴。姫っぽいのがナイトで、ナイトっぽいのが姫ってとてもオイシイ少女漫画だと思う。表題作の先輩三人組が実は凄く気になっていて、是非この作品だけしっかり長編で読んで観たかったです。

六畳半〜のだらしない緒子のニートっぷりといい、魔女〜の負けっぱなしの那須といい、女子のダメダメ加減が容赦ない。でもそこが気持ちいい。(そのくせ相手のことが大好き過ぎるところとか、あーもう恥かしいっ!)緒子と鳩子の話もっと読みたい。

まとめると、キャラ造形がうまい作家さんということなのかも?あと表題作や「白紙」よりも、下手に着飾らない作品の方が面白くなる気がします。

2010年03月19日

マンガ大賞受賞!「テルマエ・ロマエ」

【<マンガ大賞>「テルマエ・ロマエ」が大賞 古代ローマと現代日本の風呂がつながる】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100317-00000010-mantan-ent


マンガ大賞受賞おめでとうございます!!

昨年が「ちはやふる」、その前が「岳」、まさかの風呂漫画ですよ。大好きな作品ですが、正直これほどメジャーな賞を受賞するとは想像していませんでした。嬉しいびっくり。急ぎお祝い記事デス。

生真面目な男ルシウスの奮闘ぷりと、日本の老人たちとのゆるいやり取りがクセになる。和める作品です。ルシウスのお風呂大好き!オーラに引っ張られて、あっという間に世界に引き込まれますよ。

それにしても設立から3年ですか。
マンガ大賞の方向性がわからなくなってきましたw


テルマエ・ロマエ(1)感想

2010年01月26日

天にひびき(1) / やまむらはじめ

天にひびき 1巻 (ヤングキングコミックス)
天にひびき 1巻 (ヤングキングコミックス) / やまむら はじめ

幼馴染と一緒に見学に行ったプロオケの練習場所で、少年は一人の少女と出会う。オーケストラとの息が合わない指揮者に代わって、父親の代理だと名乗る少女が、突然指揮を振り始めた。

自身もヴァイオリンを学ぶ主人公の秋央は、幼馴染の少女の父親がコンマスを務めるオーケストラのリハーサルを見学に行く。しかし久し振りに振るという指揮者は気負いすぎているのか、オケと音が噛み合わない。メンバーからの評価も散々の有様だった。休憩から戻らない指揮者にメンバーが声を上げたとき、秋央と同年代くらいの少女が練習場に現れた。戻らない父親に代わって少女が指揮を振り始めると、オーケストラがこれまでにない音を響かせ始めた。

それから9年後、ヴァイオリンしか取り柄がないという理由で、秋央は音大に進学した。しかしその演奏は、恩師から「心ここにあらず」と評される内容だ。あのとき少女が奏でた音楽を追い求め、求めても手に入れることができず、ヴァイオリンを辞めようとすら考えていた時期もあった秋央は、音楽に対する情熱をすっかり擦り減らせていた。それほど少女の音は鮮烈だったのだ。そして、先輩から誘われて向かった新歓コンパで、秋央は成長した少女に再会する。指揮科に入った同じ一年の、曽成ひびきに。

ひびきが秋央たちの前でピアノを弾くシーンがある。
秋央はあの少女がいったいどれほど成長しているのか、またあの体験ができるのではないかと期待する。しかし、ひびきの指使いは拙いものだった。そのことに秋央は安心する。天才とはいえ「こんなものか」と。

ところが彼女の音楽は深度を増していく。煌めいて躍動的な、心が揺さぶられような感覚に、秋央は一気に引き込まれた。以前から記憶を頼りに追いかけてきた音が、目の前にまた現れて、彼は浮足立つ。

浮足立った彼は、レッスンで彼女の真似をしてみるのだが、先ばかり追い求めて土台をすっ飛ばしてきた音楽では、ノリばかりで実がないと言われてしまう。彼女の音楽と拮抗できるものが自分の中にあるとも思えず、けれどなにもせずただ聞いているだけにはできない。彼女の音楽に憧れても、彼女と同じにはなれない。目標とするには大きすぎる存在に、秋央は葛藤している。

「いつも手元に自分の楽器ある訳じゃない」
「だからこそ強く、つよく、自分の内に音楽を奏でておかなくちゃならない」
オケがあってこその指揮者。ひびきの目指す音楽はずっと先にあるという台詞が示すのは、これから舞台が外へ広がっていくという暗示だろうか。父親について海外に行ってしまった秋央の幼馴染の伏線もあり、今後の展開に大いに期待が持てそう。

あとがきにもあるとおり、音楽ものといえば、つい先日完結したばかりの某作品。あちらが天才同士の進む道を描いた作品なら、こちらは天才をとりまく人々を描く作品になるのかな。秋央のもがきで全体的に重いトーンですが、音楽を奏でる楽しさを体いっぱいで表現するひびきが、とても魅力的です。あと各回にオケにまつわるコラムが挿入されていて、凄く参考になりました。

2010年01月23日

テルマエ・ロマエ(1) / ヤマザキマリ

テルマエ・ロマエ I (BEAM COMIX)
テルマエ・ロマエ I (BEAM COMIX) / ヤマザキマリ

古代ローマ人の設計技師ルシウスは、浴場のアイディアに困ると、現代日本にタイムスリップできる特異体質だった!

生真面目な性格からか、古き良き浴場を設計してきたルシウス。人々の欲求を詰め込んだ浴場は、彼にとって騒々しく落ち着かない場所だ。親しい友人から言葉をかけて貰っても、流行に乗れない技師は無用と職を失っても、彼は自分の目指すものを曲げられない。

そんな彼が、現代日本の、温泉や銭湯、家風呂にタイムスリップしてしまう。そこで得た知識やアイディアを持ち帰り、皇帝の無理難題や、老人のささやかな願いを叶えていく。

行く先々の風呂には地元の老人たちがいて、彼らは突然現れたルシウスに驚きながらも、とてもよくしてくれる。のぼせてはいけないとフルーツ牛乳を振る舞ってくれたり、風呂の入り方から温泉の飲み方、服がないのかと浴衣を貸してくれたり。言葉のわからないルシウスは、彼らの好意を勘違いしたり誤解しながら受け止めていく。そのちぐはぐなやり取りが面白い。老人たちが優しいのは、昔ながらの親切な老人像のせいもあるだろうが、なによりルシウスの「風呂大好き!」オーラが、彼らに言葉はなくとも伝わるせいだと思う。

突然の出来事に始めこそ驚いているルシウスも、生来の探究心から、初めて目にする風呂の構造に驚き興奮して夢中になっていく。そしてローマに持ち帰ったアイディアによって、彼は有名技師へ変わっていくのだ。彼が作った浴場を、皇帝も友人たちもみなが素晴らしいと言う。けれどルシウスは心苦しく思っている。なぜなら、それらは他から得た構想であって彼自身で生み出したものではないからだと。

それでも、2000年以上離れた世界のものを、古代ローマの技術と物を使って作り出そうとするルシウスの情熱は凄まじい。それは彼自身のアイディアであり、少しでも良い風呂に入って貰いたいという、彼の目指すものへの情熱だ。

まあとにかく面白かった。
真面目なルシウスと、日本の老人たちのゆるいやり取りがいいです。
風呂限定がどこまで行くのか、現代のものをどこまでルシウスが再現できるのか楽しみ。皇帝のお気に入りになった上、奥さんには逃げられたルシウスがどこまで頑張れるかも楽しみ(笑)

2010年01月19日

flat(3) / 青桐ナツ

flat(3) (BLADE COMICS)
flat(3) (BLADE COMICS) / 青桐ナツ

2巻の感想をすっ飛ばしてまで、3巻の感想を書きます。
そんくらい良かった。

あっくんはとても聞き分けが良いし、ちゃんと言いつけは守るし、一般的な同年代の子供と比べても、ずいぶん手のかからない子供だ。可愛くて可愛くてあっくんの笑顔は眩しい。大好きな平介に会えると知ってわくわくしたり、会えなくてしょんぼりしたり、平介に元気がないと思えば、四つ葉のクローバーを探し回ったり、とにかく「良い子」に描かれている。これまでと何も変わらない。

ところが、学祭が迫って、平介は忙しい。
行きがかりとはいえ、クラスの輪の中で仕事を任され、そのために動き始めたからだ。お菓子を作ってあげたことから懐いてきた従弟を、微笑ましく思えていたこれまでが嘘のように、今ではひたむきなあっくんの想いに答えられなくて、困惑している。邪魔だとは思わなくても、自分の言葉ひとつで一喜一憂する年の離れた従弟を、つい「面倒だな」と思ってしまう。

他人から送られてくる無条件な気持ちは(好意にせよ悪意にせよ)、根なし草のようにふらふら過ごしてきた彼にとって、「重くヘビー」なものだった。相手にどんな言葉をかければいいのか、対応がわからないのだ。それは彼が、今まで人に頓着せず、気ままに過ごしてきた代償なのだと思う。

それでも、平介なりに頑張っている。人ごみで手を繋ぐことは思いつかなくても、わからないなりに、あっくんを気落ちさせないよう傷つけないよう、必死になって気を使っている。言葉を呑み込み、大人な対応でその場を切り抜けようとすることもある。誰の言葉にも心を動かさなかった彼が。小さな従弟のために。

平介と花を摘みに行く途中、友達と出会って遊びに誘われたあっくんは、すぐに返事ができなかった。平介との約束があるから、行きたくても行動に移せない。そんな子供らしくない頑ななあっくんのようすに、平介がちゃんと考えて言葉をかけるところが良かった。自分が変われないように、あっくんにそれを求めるのも酷だなと気づくラスト。

だからと言って、月日がなんとかしてくれるというのも甘いと思うけどね!(笑)
少しずつ成長していくようすが、ゆっくり丁寧に描かれています。

2010年01月09日

王子と小鳥 / 山中ヒコ

王子と小鳥 (花音コミックス Cita Citaシリーズ)
王子と小鳥 (花音コミックス Cita Citaシリーズ) / 山中 ヒコ

借金のかたに砂漠の国へ売り飛ばされた鈴木は、オークションにかけられた。奴隷として第一王子に買い取られようとした彼は、第二王子のハーリドによって買い上げられることになった。

アラブものはあまり手に取ることがないのですが、これはいいBLかつファンタジーでした。寓話と言った方が当て嵌まるかもしれません。優秀で寡黙な第二王子と、奴隷として買われた美大生鈴木の恋のお話。

第一王子は不遜でプライドが高く、何においても自分が一番でないと許せない皇太子だ。一方、他国から嫁いできた側室を母親に持ったハーリドは、人柄とその優秀さでとても人気がある。そんな弟がいつか反乱を起こすのではないかと恐れているのか、兄は立場を見せつけるように、ハーリドが大切にするものは片っ端から奪ってきた。

兄の横暴や自分の境遇やなにもかもを諦めているように見えるハーリドが、初めて兄に反抗した。オークション会場で、兄が目をつけた鈴木を横から買い上げたのだ。ただ、買い取った鈴木を、彼は奴隷として扱うことはなかった。弟のミシャーリの相手をさせたり、同じベットに眠っても手を出すことすらなかった。言葉がわからないながら、手探りで距離を測るような、じれったいほどの時間が流れていく。ハーリドは、客人のように鈴木を扱いながら、日本に帰りたいという彼の望みだけは叶えなかった。奴隷にされかけた日本人ではなく、愛しい人として鈴木を手放せなくなっていたからだ。

冒頭、婚約者に別れを告げるハーリドが描かれている。
一方的に婚約破棄を聞かされた彼女が詰め寄るのだが、ハーリドの表情は変わらない。冷たい横顔のまま、兄の第三夫人になれるとしたらどうかと彼女に問いかけた。彼女は光栄だと答えた。この国では当然のことだった。

その後、第三夫人に召し抱えられた彼女が再登場する。
ハーリドと鈴木の睦まじい姿を見た彼女は、夫に鈴木をハレムに入れることを提案した。ハーリドとの婚約破棄が兄からの命令だったことを、彼女は知ってしまったのか。それとも、ただハーリドを試したかったのか。

婚約破棄が、夫が本当に自分を欲して下した命令であれば、彼女も諦められただろう。自分の存在価値が、夫にとって「ハーリドからなにかを奪うため」の駒でしかなかったと気づかなければ、第二王子の立場をハーリドが諦めているように、彼女もまた自分の立場を諦めていたはずだ。あるいは、ハーリドが命令に反抗できない人であれば、自分を諦めた彼を、彼女は許せたかもしれない。
しかしハーリドは、兄に反抗してまで鈴木を高額で買い取ったのだという。鈴木へ向けられる柔らかな彼の眼差しに嫉妬し、何故あのとき少しでも争ってくれなかったのだと、ハーリドを憎く思ったことだろう。

だが絶対に背くことができないこの命令によって、ハーリドが傷つき苦しむ姿を見た彼女は、その場に蹲り顔を抱える。ハーリドは自分を許さないだろう。自分にとって彼がどれほど大切な人だったのか、そしてその大切な人を傷つけてしまったことへの後悔に、彼女は崩れ落ちた。

彼女の登場はこの二つきりだ。
基本的に、ハーリドと鈴木の想いが少しずつ育まれていくようすを描いた作品なので。その一方で、彼女やミシャーリを描くことによって、作品世界の足場が固められたように思う。王族の権力、皇太子とその他王子の絶対的な関係など、すんなり入ってくる作りがにくい。また、彼女がハーリドを想っていたように、鈴木にとって祖父がそうであったように、ハリードと鈴木、二人が互いを大切な人だと気づく流れもうまい。

お互いわからない言葉を使いながら、たどたどしく進む幼い二人の関係は初々しさ満点で、とても可愛いです。俺様な王子もいいけど、ハーリドのようなロマンチックで無口な王子さまも良かった。新たな発見でした。あとずっと気を張って強い子だった鈴木君が、おじいちゃんの思い出を口にしてポロポロ涙を零すシーンが、個人的に一番萌えた!

2010年01月02日

今年はコレが凄かった!漫画2009

一昨年の経験(=読み切れない)を元に、昨年は前年の半分まで購入数を減らした。
結果、良本にたくさん出会えた一年だった。

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逆転ハニー 1 (花とゆめCOMICS)
逆転ハニー 1 (花とゆめCOMICS) / 時計野 はり

喧嘩っ早い夜神君と、おっとり天然な密香ちゃんは幼馴染。助けた亀に呪われて、二人の体が入れ替わってしまうお決まりのパターン劇。男女逆転はちぇんじ!以来大好物。「お姫さまとナイト」な設定も見た目が逆転してるのが面白い。

ちょっかい出されても我慢して、殴らないように堪えてるケンちゃん(見た目は密香)がエロス! 男になろうが女に戻ろうが、ただただにっこにこしながら、ケンちゃんを追っかけてる密香ちゃんが可愛くって仕方ない!

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ラブシック 1 (花とゆめCOMICS) ラブシック 2 (花とゆめCOMICS)
ラブシック 1 (花とゆめCOMICS)
ラブシック 2 (花とゆめCOMICS) / モリエ サトシ

幼い頃の彼女とのやり取りだけを信じて、色へ無償の愛を注ぐハル。ナツの切ない願い、フユもアキもみんな愛されたいと願っている。果たしてただの恋愛もので終ってしまうのか、難しい作品だと思う。

個別感想
1巻 http://zinc-unit.seesaa.net/article/125019111.html

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白磁 1 (花とゆめCOMICS)
白磁 1 (花とゆめCOMICS) / モリエ サトシ

白と紺のコントラストが美しい、今年一番の表紙買い。
女子高生エロス!!

驚愕の展開を見せたラストはなんだかなあ(苦笑)という感じだったけど、「ラブシック」と比べ、こちらは人の情念なんかが透けて見えてかなりおどろおどろしい。が、作家の色気ある絵が女子高生の肌の白さを際立たせ、絵描きと女子高生、二人の存在の透明感に繋がっている。

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少女ファイト 6 (イブニングKCDX)
少女ファイト 6 (イブニングKCDX) / 日本橋 ヨヲコ

春高を前に、それぞれ弱点を見直す段階にきました。
最新刊で表紙になったルミ子、練とシゲルはこれからもっと大変なことになりそうだし。その一方で厚子と義母の関係や、明のひきこもりの話や、登場人物が増えて色んなエピソードが並行しているのに、まったく気にならないのが凄い。

ますます熱くなってきた少女ファイト。
初版特典もかなり熱い!

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放課後のカリスマ 3 (IKKI COMIX)
放課後のカリスマ 3 (IKKI COMIX) / スエカネ クミコ

人間だからクローンだからと揺れる史良。人間の奥深くに眠る暗いものを暴くような作品。それでいて、愛らしく美しい姿のキャラクターたちと、彼らが面白おかしく動いているギャップが面白い。これは想像以上に奥が深い。

個別感想
1・2巻 http://zinc-unit.seesaa.net/article/122677151.html
3巻 http://zinc-unit.seesaa.net/article/135084701.html

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COPPELION 6 (ヤンマガKCスペシャル)
COPPELION 6 (ヤンマガKCスペシャル) / 井上 智徳

コロニーで働くロボットは言う。
「ワタシはロボット、人間を真似て作られた模造品に過ぎナイ」
だから人間を羨ましいと言う。外に出て風を感じられることが羨ましいと。コッペリオンと呼ばれる彼女たちは、その風を感じることができる。放射能に汚染され、今では人間ですら感じることができない、その風を。

残された人々の救助の話ばかりで、これまで「現在」しか描かれていなかったことが、これからの「未来」が見え始めた5巻。雲が立ち込め、風が逆巻く作中の東京そのもののような未来が。

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ミツバチのキス 1 (アクションコミックス) ミツバチのキス 2 (アクションコミックス)
ミツバチのキス 1 (アクションコミックス)
ミツバチのキス 2 (アクションコミックス) / 伊図 透

接触することで相手のすべてが見えてしまう慧。人に触れることができない彼女が、人と心の深いところでの触れ合いを重ねていく。ショッキングな描写や出来事が多く、2009年で一番衝撃的だった作品。

個別感想
http://zinc-unit.seesaa.net/article/137214567.html

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ばらかもん 1 (ガンガンコミックスONLINE)
ばらかもん 1 (ガンガンコミックスONLINE) / ヨシノ サツキ

2009年一番の笑顔は「なる」だ!
懐が深く大雑把、島のでっかさと大らかさ両面をしっかり描いてくれそうな作品。ぼっちゃんな半田がたまに見せる男らしさにきゅんきゅんくる。

個別感想
http://zinc-unit.seesaa.net/article/129444843.html

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鋼の錬金術師 24 (ガンガンコミックス)
鋼の錬金術師 24 (ガンガンコミックス) / 荒川 弘

物語は佳境へ。
戻ってきたキングブラッドレイ。等価交換だというなら、すべてを失くして手にいれた力を持つ彼を、いったい誰が倒せるのか。戦場で圧倒的な存在感を見せる彼との最終決戦は。また一人と倒されていくホムンクルスたちを見ていると、敵とはいえ寂しい気持ちになる。物語が終わりを迎えようとしていることへの寂しさかもしれない。

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月光条例 7 (少年サンデーコミックス)
月光条例 7 (少年サンデーコミックス) / 藤田 和日郎

ようやく月光の正体もわかりそうな予感?!だけを残した7巻。こんないいところで終わるなんて・・・。月光の語りに度肝を抜かれた。これほど真っ直ぐ「男である意味」を示すのもめずらしい。が言葉の威力は大きい。ともかく、藤田和日郎がこれで終わるはずがない。無口で無愛想で喧嘩ばかりしている月光の、シャイで一本気なところが大好き。

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受賞おめでとうございます!「ちはやふる」は、強敵も現れさらに熱くなってきたし、「聖☆おにいさん」には相変わらず笑わせて貰った。「のだめカンタービレ」のラストはちょっと拍子抜けだったけど、とりあえずカーテンコールがあるらしいのでそれ待ちかな。ますます怒涛の展開を見せる「ONE PIECE」は誰にも止められない。「弱虫ペダル」が自転車漫画として盛り上がってきたのも嬉しい。

ただ2009年は、少年漫画をあまり開拓できなかったのが反省点。
長期連載の作品が次々終わりを向かえる中、強力な作品を見つけたいところです。

今年も面白い凄い作品に、たくさん出会えますように!!

2010年01月01日

今年はコレが凄かった!BL漫画2009

昨年はかなり選んで読みました。
数は少なかったですが、その分当たりが多かった印象です。
(長くなった感想は別記事にしました)

丸角屋の嫁とり (ディアプラスコミックス)
丸角屋の嫁とり (ディアプラスコミックス) / 山中 ヒコ

ある事情から性別を偽って育てられた鈴は、借金のかたに嫁入りを命じられる。以前助けてくれた町人をみて、男として生きたいと願いながら叶わず、せめて父から優しい言葉ひとつかけて貰えればと願うも叶わない。命を絶つべく持たされた短剣ですら満足に扱えなかった。鈴の絶望が胸に痛い。

男の元で、男として対等でいることと、妻として愛され続けること。相反しているようで、実は「相手に認められたい」と集約できる。鈴のこの真っ直ぐな願いは叶う。非常に少女漫画的な展開と、鈴の可愛さがマッチしていて面白かった。

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惑溺趣味 (バンブー・コミックス REIJIN Selection)
惑溺趣味 (バンブー・コミックス REIJIN Selection) / 明治 カナ子

同時収録されている短編がとても良かった。
他人と入れ替わり若者の体を借りた初老の教授と、研究員の青年の話を描いた「こんこん」 大会社の社長と、彼が飼っていた犬ベスと同化した青年を描いた「ベス」 生活と恋愛と違いはあれど、行き詰り身代わりとなり、どこかやけっぱちのくせに、触れた温かさから手を離せない。ただ相手を想う強さを描いた秀作。

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兎オトコ虎オトコ 1 (ショコラコミックス)
兎オトコ虎オトコ 1 (ショコラコミックス) / 本間 アキラ

やくざの組長の野波と、彼を偶然助けた医者の卯月。互いに対して徐々に本気になっていく過程が、とてもうまくて切ない。命を救われたことで始まった野波の恋は、真面目で仕事に誇りをもつ卯月の姿を見て、深度を増していく。一方の卯月は、暴力的でストレートな野波の求愛にまったくついていけなかった。やがて自分の感情に気づいた卯月がとった行動が、野波を傷つけることになる。

ときどき二人が兎と虎そのものになるカットあり、全体的にとっても可愛いラブコメ。所謂JUNE的なやくざものではないので、苦手な人でも大丈夫だと思います。ちなみに卯月はずっと野波を「やくざさん」と呼んでるわけです。はやく「野波さん」って呼べる日がくるといいな。2巻で完結予定らしい・・・はやく出してください・・・気になって仕方ない。

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今夜はテイクアウトにて (ミリオンコミックス Hertz Series 63) (ミリオンコミックス  Hertz Series 63)
今夜はテイクアウトにて (ミリオンコミックス Hertz Series 63) ミナヅキ アキラ

照れたり呆れたり怒ったり相手を欲したり、多彩とは言えないながら、どの表情からも、匂い立つような色気が滲み出ている。独特なタッチなので、決して万人受けするタイプじゃないんだけど、これはクセになる。

個別感想
http://zinc-unit.seesaa.net/article/137118254.html

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恋と罪悪 (MARBLE COMICS)
恋と罪悪 (MARBLE COMICS) / たうみ まゆ

描かない(書かない)ことで想像力を刺激された前作と比べて、とてもわかりやすくなったと思う。編集もカットも洗練されて読みやすくなった。でもわたしは「あいのいろ」や「恋と罪悪」が好きだ。モノローグもなく登場人物の発言はときに唐突でさえあるのに、違和感を感じさせない。それはたとえ迷い誤ることはあっても、彼らの人間性が一貫しているからだ。なにより、この人の絵が好き。

小さい書き文字も可愛くって好きなんだけど、もう少し減らせばもっとストーリーに集中できる気がする。あと前作みたいなぶっ飛んだ話がまた読みたいな。

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日曜日に生まれた子供 (ミリオンコミックス 37 CRAFT SERIES 27)
日曜日に生まれた子供 (ミリオンコミックス 37 CRAFT SERIES 27) / 紺野 キタ

枯れたミドルエイジ受!
名家の主人ローランド。幼い我が子との距離感が掴めず、妻が愛人の元へ出て行っても文句さえ漏らさず、なにものにも頓着しない、どこか全てを諦めたような性格が、彼を年齢以上に老いて見せている。そんな彼が、ただ一人の青年に執着をみせた。ローランドの執事だった父親の跡を継いだ青年エリックに。青年もまたローランドに長い恋をしていたのだけど、想いが通じ合うまでが切ない。お互いを想い合っているのは明らかなのに、身分の違いが二人に影を落とす。

短編「先生のとなり」も良かった。痩せて枯れ木のような老いた先生と、そんな先生を可愛いと言って憚らない中年男のお話。一緒にいても感じる孤独、けれどそれさえ呑み込んで笑える強さが、そこにある。

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ダブルミンツ(EDGE COMIX)
ダブルミンツ(EDGE COMIX) / 中村 明日美子

例えば死ぬまで一緒とか相手が死んだら生きていけないとか、とんでもロマンチックなことを考えてしまうところを、それでも生きていかなきゃいかのよと、頬をぶっ叩かれた。暴力的で、淫靡で、血生臭いJUNEの見本のようでいて、行き着く先は明るい。

個別感想
http://zinc-unit.seesaa.net/article/124851526.html

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俎上の鯉は二度跳ねる (フラワーコミックスアルファ)
俎上の鯉は二度跳ねる (フラワーコミックスアルファ) / 水城 せとな

「窮鼠はチーズの夢を見る」の続編。
恋愛の美しさと汚さがたっぷり描かれてます。BLの枠組みを越えた、清濁併せた作品。互いに雁字搦めになった恭一と今ヶ瀬。とにかく人間臭くてどうしようもない二人に、最後まで引きずられっぱなしだった。

個別感想
http://zinc-unit.seesaa.net/article/137120341.html

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アイツの大本命 2 (ビーボーイコミックス)
アイツの大本命 2 (ビーボーイコミックス) / 田中 鈴木

ドSイケメン×非モテ男子の続編。
佐藤のことが好きなんだと自覚した吉田。相変わらずダークサイドを仄めかす佐藤と、彼の想いまで測ってやれなくて困惑する吉田。両想いになったものの、どこか心に距離がある関係に萌える。

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YES IT’S ME (MARBLE COMICS)
YES IT’S ME (MARBLE COMICS) / ヤマシタ トモコ

ラブコメとシリアス、どちらも楽しめるとってもお得な一冊。思い入れが強すぎてまとめられん。とにかく表題作で爆笑させて頂きました。お馬鹿なトーマと、クールなようでいて実はムッツリ?(笑)なキノコ。本当に笑えるラブコメ。

個別感想
http://zinc-unit.seesaa.net/article/131975080.html

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山中ヒコ・えすとえむの台頭は嬉しい出来事だった。
個性的な作品が増えるのは大歓迎。年下攻めは苦手だったけれど、一昨年目覚めたオヤジ受にはちょっと本気でハマりそうです。おやじというか還暦?脂がのった中年男の必死な様もいいなあ!

2009年12月28日

今夜はテイクアウトにて / ミナヅキアキラ

今夜はテイクアウトにて (ミリオンコミックス Hertz Series 63) (ミリオンコミックス  Hertz Series 63)
今夜はテイクアウトにて (ミリオンコミックス Hertz Series 63) (ミリオンコミックス Hertz Series 63) / ミナヅキ アキラ

表題作は、ファーストフード店を展開する会社の企画部に勤める生真面目なサラリーマンと、売上トップのおちゃらけ店長の話。

両想いになるまでが早く、体の関係まであっという間に進む。絵も決してうまい作家さんではないと思う。これがデビュー作ということもあって動きもぎこちないし、展開も単純。だけどあまりあるほど人物が魅力的。独特の絵柄なので読み手を選ぶかもしれないけれど、照れたり呆れたり怒ったり、相手を欲したり、どの表情からも、匂い立つような色気が滲み出ている。

特に、天才彫刻家・藤森と、研修にやってきた青年・牧村の話を描いた短編「ゆびさきの恋」が凄く良かった。
研修でやってきた牧村を藤森はモデルにしたいと言い出す。作家が愛おしそうに対象に触れるのを見てしまった牧村は、やがて藤森を意識せずにはおれなくなっていく。触れられて体が反応してしまうことを恐れながら、対象としてでもいいから藤森に触れて貰いたいと、モデルになることを承諾した。

しかしそれは苦しさばかりが募る作業だった。
自分が触れられるばかりで、藤森に触れないように我慢することは、とても労力のいることだった。それでも彼は我慢し続けた。なぜなら触れるという行為は、作家にとって創作の一部であり、彼を尊敬する牧村から見れば、神域そのものだからだ。
たどたどしい手つきが実にいやらしい。いやらしいと感じる自分自身を牧村は恥じて、恥じながらも求めてしまう。牧村の葛藤と、天然な藤森。わずか30ページの短編で、一気に引き込まれた。

2009年12月27日

俎上の鯉は二度跳ねる / 水城せとな

俎上の鯉は二度跳ねる (フラワーコミックスアルファ)
俎上の鯉は二度跳ねる (フラワーコミックスアルファ) / 水城 せとな

言わずもがな「窮鼠はチーズの夢を見る」の続編。

「同性愛者の男がどれくらい深く男を愛するのかわからない」だから「今ヶ瀬がだめだと言うならだめなんだろう」恭一の悩みは、恥ずかしながら正直盲点だった。セクシャリティから人間そのものの問題へ。

恭一への気持ちに雁字搦めの今ヶ瀬は、泣いて喚いて煽ってみっともなく縋る。恭一は、そんな今ヶ瀬をなぜ手離せないのかわからないまま、とにかく彼を追いかけた。気づけば「自分の内側から溢れてくる感情にどうしようもなく流される思い」に、彼は振り回されっぱなしだ。それは今ヶ瀬が言った「恋」そのものでした。残酷で支離滅裂で醜くて恥も外聞もない、不完全なままの二人の恋。

今ヶ瀬がいつか疲れて逃げ出すかもしれないと思いながら、恭一は彼のためにすべてを捨てた。単純なハッピーエンドでもなく、これからの未来もわからないままだ。互いを補い合い、どこか折り合いをつけながら、不完全なまま進んでいくしかない。別れに怯え恐れ苦しむことに、恭一はとっくに腹を括っていた。

余談だけど「ダブルミンツ」のラストと非常に被るところがあって驚いた。達観したような、迷いも全部飲み込んだような、それでも相手を諦められない感じがとてもよく似ている。

2009年12月26日

ミツバチのキス(1)(2) / 伊図透

ミツバチのキス 1 (アクションコミックス) ミツバチのキス 2 (アクションコミックス)
ミツバチのキス 1 (アクションコミックス)
ミツバチのキス 2 (アクションコミックス) / 伊図 透

2009年で一番衝撃的だった作品。

触れた人のことがわかってしまう草野慧。その能力を利用していた宗教団体から逃げ出したところから、彼女の物語が始まる。特殊な能力を持った少女が追われて・・・と言えばありがちかもしれないが、この作品はそれだけで終わらない。

ちなみにこの力は、心を読むのとはまったく違う。
「相手の全てが見えてしまう」力だ。当人が過去経験した悲しみや怒りや喜びは、思い出として和らいだり丸くなったりするものだけど、奥底に眠っているそうした感情や記憶が、当時のままダイレクトに流れ込んでくるのだ。コントロールできない力。すべてが混じって真っ黒になったそれらを、本人も知らないところで、彼女は色分けし見極めようとしている。

誰にも触れられず、誰からも触れられない。
好意を持った相手ですら、いや、そういった相手だからこそ。
孤独と寒さに震えながら、彼女はとても無防備だった。優しい言葉や気遣いに弱い。斜視というのとは関係ないだろうけど、真っ直ぐに向かってくるものに弱い。

辛かったことも悲しかったことも、時が経てば、痛みを他のものに置換して人間は生きていくんだと、ある男が言った。「未来を変えられるのは、わたししかおらんのやから」と言った少女は、彼女の目前で、孤独の世界をぶっ壊してみせた。

痛みも温かさも感じながら、彼女自身も変わっていく。少女に触れてみたいと願うようになり、男には汚れた部分を知られたくないと思うようになる。人間の孤独やどうしようもない弱さに、真正面から向き合うのはとてもしんどい。でも目を逸らしてはいけない。
  
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